汚穢の満ち引き
- 第4回
- 2026年11月2日
日常のなかの小さく緩慢な死
鶏頭の触手 花はいつ死ぬのだろう。 花びらのみずみずしさと色彩に翳りが落ちはじめたときだろうか。あるいは全体が干からびて、がくから散り落ちたときだろうか。 それとも花につながる茎や葉や根が、すべてみな枯れたとき? 1週間前に花屋で買った切り…

表紙写真・石間秀耶
酒井朋子
鶏頭の触手 花はいつ死ぬのだろう。 花びらのみずみずしさと色彩に翳りが落ちはじめたときだろうか。あるいは全体が干からびて、がくから散り落ちたときだろうか。 それとも花につながる茎や葉や根が、すべてみな枯れたとき? 1週間前に花屋で買った切り…
平石界
通常の3倍 ミーティングで悪乗りして同世代の友人とガンダムネタで盛り上がってしまい、周囲を置き去りにしてしまってから後で反省することがしばしばある。「それはすごい効果ですね」「ざっと通常の3倍かな」「きっと赤いはず」といった具合だ。元ネタは…
三村一貴
詩と現実が近づく
前回は、杜甫の「春望」を取り上げ、この詩は戦争がいま現在も続いている状況を詠んだ詩であることを指摘した。すなわち、「国破れて山河在り」という句は、国都は破壊された状態で横たわっている、それと同時に、人無きがごとくなった世界に山河がその存在感…
鄭栄桓
甕の村 祖父には三男一女があり、ぼくの父は末子だった。一家を支える経済の中心は農業であり、不足がちなものを窯からの収入で補い、質素ながら暮らしはけっこうなりたっていた。けれども1910年に「日韓併合」があり、9年後に三・一独立運動がおこった…
松本俊彦
【最終回】
「どうしたら精神科医になれますか?」 その言葉は、講演会場を離れた後も、ずっと私の耳のなかで残響していた。 初夏の昼下がり、私は横浜の元町通り、JR石川町駅側の入り口付近にいた。さっきまで私は、名門として知られる私立女子高で薬物乱用防止講演…
進化と生態で迫る深層
深野祐也
私たちの社会は、食料、水、気候の安定、災害の緩和、心身の健康など、地球上の自然環境から多くの恩恵を受けています。しかしいま、そうした自然が失われつつあり、同時にその恩恵も失われつつあります。 では、人間社会は自然を守る方向へ動き始めているの…
人間観からざっくり理解する
小平武史
これまでの連載では、多くの場面においてケインズの人間観が現実的であり、「必ずしも人間は常に合理的に考えて判断できるわけではない」ということを前提に経済理論を構築していた様子を紹介してきました。今回は逆に、人間の持つ非合理的な心理傾向をケイン…
司会 長瀬海
今年3月31日に、『日本政治思想史』(新潮社)の著者の原武史さんと、『列島哲学史』(みすず書房)の野口良平さんのトークイベントが、週刊読書人の主催で行われました。日本の思想とは何か。戦後思想を継承する可能性はどこにあるのか。お二人の刺激的な…
児玉浩宜
前々回、前回に続き2025年3月の渡航時の日記です。 3月27日 昨夜、自爆型無人機による空爆が続いていた。テレグラムの情報やハルキウ市の発表によると、合計12回の攻撃があったという。空爆に関しては、侵攻開始当初はミサイル中心だったが、現在…
【WEBみすず限定】スロボディアン『破壊系資本主義』(1月16日刊)訳者あとがき
松島聖子
小社刊『破壊系資本主義(原題:Crack-Up Capitalism: Market Radicals and the Dream of a World Without Democracy)』は、極端な市場主義者の野望と実践を追跡する世界的…
武井彩佳
【最終回】
人生と併走する国籍 連載の最終回は、国籍とはいったい何なのかという最初の問いに立ち戻ろう。 最近、日本人と外国人の境界がやたらと強調される傾向にある。日本社会の入り口の開閉をきちんと管理し、つまり在留手続きや帰化申請を厳しくすべきで、国家の…
再び
藤山直樹
月に2回、土曜日19時から定期的に予定が入っている。日本精神分析協会の養成機関であるインスティテュート東京支部の事例検討会と、理事長を務めている精神分析関係の財団が主催する事例検討会である。今日は今月の第3週なので財団の検討会だ。 事例検討…
【書評】野口良平『列島哲学史』
長瀬海
哲学がはじまって、深まっていくときの、その様態を摑むこと。日本という国がくぐり抜けてきた、長く果てしない時間に対する思念。哲学とは、日本とは何か、を同時に問うことは、たとえるなら右手と左手で別々のフライパンを操るような、たぐいまれな器用さが…
三村一貴
『論語』の言葉をどう受けとめるか
子曰、「辭達而已矣。」(『論語』衛霊公第十五) 子曰く、「辞は達するのみ」 「和を以て貴しと為す」「一を聞きて以て十を知る」「過ぎたるは猶ほ及ばざるがごとし」……これらはみな『論語』に由来する言葉である。もはや格言として、必ずしも出典が意識…
【書評】アラスデア・コクラン『政治理論と動物』
吉良貴之
哲学は世界を変える。少なくともここ数十年のうち、世界を最も大きく変えた哲学書はピーター・シンガー『動物の解放』(原著1975年)だろう。この書は、現代社会が食肉生産の効率化のために推し進めた集約的畜産が動物にもたらしている悲惨な状況を背景に…
【書評】チェ・テソプ『韓国、男子』
佐々木正徳
異文化に接することの意義は何だろうか。外国の知り合いができたときに、その国のことを知っていれば話が弾むかもしれないが、それよりも自文化を相対化するきっかけになることが重要な意義である。自身が当たり前だと思っていたことが他地域ではそうではなか…
【書評】モンティ・ライマン『痛み、人間のすべてにつながる』
香山リカ
私事になるが、精神科医生活にひと区切りをつけて、一昨年から北海道の山間にある孤立地区であるむかわ町穂別でへき地医療に取り組んでいる。当地も高齢化率が高く、勤務している診療所の病棟で人生の最期を迎える人も多い。 そこで問題になるのは「痛みの有…
全2回+補論
伊藤憲二
科学史家による映画『オッペンハイマー』考、補論
〔編集部注:この記事には映画『オッペンハイマー』の内容にかかわる記述が含まれています。〕 仁科芳雄の「伝記」を書いた人間として(1)、映画『オッペンハイマー』を観ると考えずにはいられないのは、仁科とオッペンハイマーの関係だ。彼らが直接会った…
陝西省・四川省・湖北省ほか
中国には、もう何度足を運んだかわからない。ほぼすべての省を訪れたことがある。2010年前後に1年ほど北京に滞在したのをはさみ、毎年5、6回は訪中している。 中国での思い出も数え切れない。酒での失敗にはじまり、思い出すのはだいたい「失敗談」だ…
文学へ、現実から。現実へ、文学から。
吉岡忍
――志賀直哉「流行感冒」(1919年)
私の友人知人のあいだで最初に新型コロナウイルスに感染したのは、俳優の石田純一さんだった。仕事で沖縄に出張し、東京にもどってすぐに体調を崩して入院、PCR検査で感染が判明したのだという。さっそくニュースにもなった。2020年4月中旬のことであ…
コペンハーゲン西橋地区を訪ねて
枇谷玲子
2023年の11月頭に、トーヴェ・ディトレウセン『結婚/毒――コペンハーゲン三部作』(みすず書房、2023年6月)の訳者である私は、デンマーク芸術基金主催のデンマーク語翻訳者、ブックフェア参加プログラムに参加するため、デンマークに赴いた際、…
【書評】カール・ヘラップ『アルツハイマー病研究、失敗の構造』
仲野徹
アルツハイマー病の治療薬開発が大きなニュースになった。日米の医薬品メーカー、エーザイとバイオジェンが共同で開発したレカネマブだ。ただし、アルツハイマー病を「治療」できるわけではなく、その進行を遅らせるだけである。臨床試験では、プラセボ(偽薬…

レオ/シュタインバイス/ツォルン『右派と対話する――ドイツ発、もう少しましに〈争う〉ための試み』小野寺拓也・西山暁義訳
2026年10月20日

ニック・カプーア『アフター安保1960――戦後日本の岐路をさぐる』山田文訳
2026年10月19日

アガンベン『河口にて』への糸口のために
2026年10月14日

野口良平
2026年9月30日

中井菜央『ゆれる水脈――写真 表象のさきに』
2026年9月17日

2026年度 日本翻訳家協会賞
2026年9月14日
2023年10月2日
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