2024年12月に書評掲載された本をご紹介します。
近藤滋『エッシャー完全解読――なぜ不可能が可能に見えるのか』
2024年12月刊
100点を超える図版で、《物見の塔》《滝》などだまし絵5作の制作過程を分解する。エッシャーが制作中に何に悩み、何を大切にしていたかにまで踏み込んでいく。謎解きの楽しさに満ちた1冊。
- 週刊文春 2024年12月19日号 評者・吉川浩満さん 「私の読書日記 エッシャー、絶滅動物、過激主義」
チェ・テソプ『韓国、男子――その困難さの感情史』
小山内園子・すんみ 訳、趙慶喜 解説 2024年12月刊
家父長制、植民地化、南北分断、軍政、経済危機、兵役……。「韓国男子」の感情史を近現代史上の事象や流行語を手がかりに辿る。フェミニズムへの応答としての韓国男子論。
- 日本経済新聞 2024年12月14日 評者・武田砂鉄さん(ライター)「男性優位社会 直視を 歪んだ「被害者化」と決別」
- 読売新聞 2024年12月15日 評者・池澤春菜さん(声優・作家・書評家) 「隣国作家へ 敬意と共感」
- 週刊読書人 2024年12月20日号(3570号) 評者・福永玄弥さん 「クィアな『失敗』から複数形の未来/過去へ」
松隈洋『未完の建築――前川國男論・戦後編』
2024年12月刊
国立国会図書館、東京文化会館はじめ数々の建築の設計を手がけ、「人間にとって建築とは何か」を問い続けた前川國男。前川自身のことばや関係者の発言、当時の資料を駆使して、その人と作品と時代を鮮やかに描く。
- 産経新聞 2024年12月8日 短評
- 週刊読書人 2024年12月13日号 評者・森一郎さん(東北大学教授・哲学)「2024年の収穫」
魏明毅『静かな基隆港――埠頭労働者たちの昼と夜』
黒羽夏彦訳 2024年11月刊
台湾北部の港街を舞台にグローバル資本主義に翻弄された港湾労働者たちの生を描く。台湾最高栄誉の文学賞・金鼎獎受賞の心揺さぶる「悲哀のエスノグラフィー」。
- 八重山毎日新聞 2024年12月16日 評者・松田良孝さん(ジャーナリスト) コラム「不連続線」
- 週刊読書人 2024年12月13日号 評者・真木由紹さん(作家) 「2024年の収穫」
『静かな基隆港』の詳細はこちら
【試し読み】「彼らは私たちである」――新自由主義下の困難を乗り越える視点(訳者解題より)
ヤン=ヴェルナー・ミュラー『恐怖と自由――ジュディス・シュクラーのリベラリズム論と21世紀の民主制』
古川高子 訳 2024年11月刊
リベラリズムは時代遅れなのか。ポピュリズムや民主主義の著作で知られる政治学者が、J・シュクラーの議論を指針に、リベラル思想のアップデートを試みる。巻末にシュクラーの論文「恐怖のリベラリズム」全文併録。
- 週刊読書人 2024年12月13日号 評者・大宮勘一郎さん(東京大学教授・ドイツ近現代文学・思想) 「2024年の収穫」
『恐怖と自由』の詳細はこちら
【新刊紹介】快調に車を運転していたリベラルがピンチに陥る。向こうから逆走車がどんどんやってくるのだ――?
駒込武編『台湾と沖縄 帝国の狭間からの問い――「台湾有事」論の地平を越えて』
2024年10月刊
〈帝国の狭間〉に置かれた人びとが、立場の違いを乗り越え、ともに平和であることは可能か?歴史認識と倫理的価値にもとづく〈同盟〉を模索する対話の試み。
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図書新聞 2024年12月21日号(3668号) 評者・石原俊さん(歴史社会学者・島嶼社会史)「24年下半期読書アンケート」
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共同配信(岐阜新聞、下野新聞ほか) 2024年12月22日 評者・石原俊さん(明治学院大教授) 今年の収穫「前線の場から考える」
『台湾と沖縄 帝国の狭間からの問い』の詳細はこちら
【試し読み】台湾と沖縄がともに平和である道はないのか? まえがきを全文公開
ブルース・ホフマン/ジェイコブ・ウェア『神と銃のアメリカ極右テロリズム』
田口未和訳 2024年10月刊
政治的暴力が深刻な米国で、その大半を占める極右テロ。何が暴力を駆動するのか。厳格な銃規制は、どうして不可能なのか。極右テロリズム40年の歴史と防止策を、第一人者が説く。
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日本経済新聞 2024年12月14日 評者・前嶋和弘さん(上智大学教授) 「誤りの優越性が生む過激さ」
『神と銃のアメリカ極右テロリズム』の詳細はこちら
【新刊紹介】政治暴力の大半を占める極右テロ 第一人者による検証と対策
ジョン・リー・アンダーソン『チェ・ゲバラ――革命の人生』上・下
山形浩生、森本正史訳 2024年10月刊
未公開資料と膨大なインタビューを駆使した決定版の伝記を、ついに邦訳。
「現代史に欠くことのできない著作だ」(ガーディアン紙)
- 毎日新聞 2024年12月28日 評者・星野智幸さん(作家) 「暴力的な強権あふれる今、道しるべは?」
ジェイソン・ファゴン『コードブレイカー――エリザベス・フリードマンと暗号解読の秘められし歴史』
小野木明恵訳 2024年10月刊
アメリカにおける現代暗号学の礎を築いたエリザベス・スミス・フリードマン(1892-1980)の知られざる生涯に迫る。NPR(全米公共ラジオ放送)年間最優秀書。
- 週刊文春 2024年12月19日号 文春図書館
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朝⽇新聞 2024年12月28日 評者・小宮山亮磨さん(朝日新聞社デジタル企画報道部記者) 朝日新聞書評委員の「今年の3点」
『コードブレイカー』の詳細はこちら
【試し読み】現代暗号学の基礎を築いた女性の生涯を追う傑作評伝 「訳者あとがき」(抄)
トマ・ピケティ『平等についての小さな歴史』
広野和美訳 2024年9月刊
「私はこれまでの研究を要約することにした。本書はその成果である」3000ページの達成を、250ページに凝縮。平等の歴史についての新たな展望をも示す、最良のピケティ入門。
- 図書新聞 2024年12月21日号(3668号) 評者・中村隆之さん(フランス文学)「24年下半期読書アンケート」
ウィンストン・チャーチル『[完訳版]第二次世界大戦2――彼らの最良のとき』
伏見威蕃訳 2024年9月刊
ダンケルク脱出、フランス失陥、バトル・オヴ・ブリテン、ブリッツ――相次ぐ危地を英国はどう切り抜けたか?ノーベル文学賞に輝く名宰相の一大戦史。第2巻は1940年5月から12月までを収録。
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北海道新聞 2024年12月22日 評者・根井雅弘さん(京都大教授) 「読書ナビ」16人の「今年の3冊」
カルロ・ギンズブルグ『自由は脆い』
上村忠男編訳 2024年8月刊
世俗権力は過去の宗教的シンボルと道具を利用してきた。そしてファシズムがテクノロジーを利用して再作動している。歴史家が不明瞭な転換期の今を追った最新論考集。
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週刊読書人 2024年12月13日号 評者・佐藤正志さん(早稲田大学名誉教授・政治理論史) 「2024年の収穫」
ヴィリ・レードンヴィルタ『デジタルの皇帝たち――プラットフォームが国家を超えるとき』
濱浦奈緒子訳 2024年8月刊
自由とテクノロジーを誰よりも愛した者は国家を超える帝国を築いた。デジタル帝国の君主たちの思想的起源や経営手法、そして彼らに抗った人々を、ストーリーとデータで描く。
- 小説すばる 2025年1月号 評者・永田希さん(著述家、書評家) 「国家権力をテック企業が侵食する」
『デジタルの皇帝たち』の詳細はこちら
【新刊紹介】古代ギリシャ・ソ連・デジタル帝国
【コラム】ブックリスト:デジタルの歴史
ファーゾン・A・ナーヴィ『コード・グレー――救命救急医がみた医療の限界と不確実性』
桐谷知未訳、原井宏明監修 2024年8月刊
つねに死と向き合い、善悪の概念を試される「グレー」な場面ばかりが訪れる、複雑で予測不可能なERの現場を巧みな構成で描くノンフィクション。
- 週刊読書人 2024年12月13日号 評者・緑慎也さん(サイエンスライター) 「2024年の収穫」
スティーブ・ブルサッテ『哺乳類の興隆史――恐竜の陰を出て、新たな覇者になるまで』
黒川耕大訳、土屋健日本語版監修 2024年7月刊
哺乳類の覇者への道のりは恐竜絶滅よりも遥か昔に始まった。哺乳類の祖先が幾多の絶滅事件を乗り越え私たちに至るまでの、途方もない歴史を描く。図版多数収録。
- DOCTOR’S MAGAZINE 2025年1月号 評者・仲野徹さん(大阪大学名誉教授)「連載コラム 押し売り書店 仲野堂」
- 読売新聞 2024年12月22日 評者・遠藤秀紀さん(解剖学者・東京大教授) 「読書委員が選ぶ2024年の3冊」
今福龍太『霧のコミューン』
2024年7月刊
現代社会へのエッセンシャルな批評から出発しつつ、荒れ果てた風景の彼方に広がる真の人間性の場を探究しようとした著者の思索のはるかな到達点。狭霧のなかで抵抗の力をためる、日々の心のコミューンへの熱きいざないの書。
- すばる 2025年1月号 評者・小津夜景さん(俳人)「触れること、感じること、生きること」
ハリー・パーカー『ハイブリッド・ヒューマンたち――人と機械の接合の前線から』
川野太郎訳 2024年7月刊
アフガニスタン紛争で両足を失った作家が見つめる、障害のある身体と機械の接合による生きやすさ追求のフロンティア。当事者の目線に沿って見つめる「支援テクノロジー」考。
- 日本経済新聞 2024年12月28日 評者・東えりかさん(書評家) <回顧 2024>私の3冊
- 週刊読書人 2024年12月13日号 評者・江南亜美子さん(書評家) 「2024年の収穫」
ハンナ・アーレント『真理と政治/政治における嘘』
引田隆也、山田正行訳 國分功一郎解説 2024年7月刊
政治と嘘について哲学者アーレントは何を訴えたのか。「ポスト・トゥルース」や「フェイク・ニュース」が充満する現代にあらためて世に問う、アーレントの必読論考二篇。巻末に國分功一郎氏による「渾身の」長文解説を収録。
- 図書新聞 2024年12月21日号(3668号) 評者・中金聡さん(政治哲学)「24年下半期読書アンケート」
山本義隆『核燃料サイクルという迷宮――核ナショナリズムがもたらしたもの』
2024年5月刊
日本のエネルギー政策の恥部とも言うべき核燃料サイクル事業は、戦前来の電力中央集権化とナショナリズムの申し子だった。その歴史の精査をもとに脱原発の必要と必然を説く。
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図書新聞 2024年12月21日号(3668号) 評者・天笠啓祐さん(ジャーナリスト)「24年下半期読書アンケート」
佐々木秀彦『文化的コモンズ――文化施設がつくる交響圏 』
2024年4月刊行
博物館・美術館、図書館、公民館、劇場などの文化施設を拠点に形成される「文化的コモンズ」の姿を本格的に論じる、初の試論。文化施設を社会的共通資本として営む、地域づくりの新スタンダード。
- 週刊読書人 2024年12月13日号 評者・萬谷ひとみさん(リーディング・リエゾン・パートナー) 「2024年の収穫」
- 毎日新聞 2024年12月21日 評者・橋本麻里さん(学芸プロデューサー) 「2024 この3冊」
ジュディス・L・ハーマン 『真実と修復――暴力被害者にとっての謝罪・補償・再発防止策』
2024年3月刊
暴力被害者は何を求めているのか。加害者の謝罪やアカウンタビリティはどうあるべきか。補償や再発防止の具体策は、司法のあり方は。『心的外傷と回復』を継ぐ総決算の書。
- 週刊読書人 2024年12月13日号 評者・人見佐知子さん(近畿大学教員・日本近現代女性史) 「2024年の収穫」
エミール・シンプソン『21世紀の戦争と政治――戦場から理論へ』
吉田朋正訳、菊地茂雄日本語版監修 2024年3月刊
英陸軍士官としてアフガニスタンを戦った著者が「戦争という概念」を現代の文脈から問い直す。「本書こそは…クラウゼヴィッツ『戦争論』の終結部と呼ぶに相応しい」(マイケル・ハワード)。
- 朝⽇新聞 2024年12月28日 評者・保阪正康さん(ノンフィクション作家) 朝日新聞書評委員の「今年の3点」
前川淳『空想の補助線 幾何学、折り紙、ときどき宇宙』
2023年12月刊
折り紙マエストロの幾何学的着想とユーモアが光る数理エッセイの逸品18篇。
- 毎日新聞 2024年12月21日 評者・若島正さん(京大名誉教授・米文学) 「2024 この3冊」
林大地『世界への信頼と希望、そして愛――アーレント『活動的生』から考える』
2023年12月刊
ここに鮮やかで瑞々しいハンナ・アーレント論が誕生した。「世界」概念を軸に『活動的生』を読み解き、アーレントの著作全体の核心に近づく試論=エッセイ。
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週刊読書人 2024年12月13日号 評者・森一郎さん(東北大学教授・哲学) 「2024年の収穫」