なぜ人は自然を守りたいのか?
進化と生態で迫る深層
深野祐也
2026年10月1日
なぜ人は自然を守りたいのか?
深野祐也
- 第18回
- 2026年10月1日
私たちの社会は、食料、水、気候の安定、災害の緩和、心身の健康など、地球上の自然環境から多くの恩恵を受けています。しかしいま、そうした自然が失われつつあり、同時にその恩恵も失われつつあります。 では、人間社会は自然を守る方向へ動き始めているの…
「緑仮説」の提案
守りたい自然とそうでもない自然がある理由
深野祐也
- 第17回
- 2026年9月1日
なぜ特定の自然が好きなのか? ローレンツが「かわいい」という気持ちの進化的な意味に注目したように、人間が自然に対して抱くポジティブな気持ちを、広く進化の観点から説明しようとした研究者がいました。アメリカの生物学者エドワード・O・ウィルソン(…
コワい、キモい、かわいい
生き物を思う気持ちの科学
深野祐也
- 第16回
- 2026年8月3日
私は小学校低学年のころ、夜の暗闇がとにかく怖い子どもでした。夜、部屋の電気を消して布団に入ると、昼間には何とも思わなかった壁のポスターの裏から何かが這い出してきたり、部屋の隅に何かがいるような気がしたりして、なかなか眠れませんでした。隣の姉…
ヒトの心のカギは難産にあり?
深野祐也
- 第15回
- 2026年6月1日
前回は約7万年前から今にいたるまでの比較的短い期間に着目し、紫外線が肌の色を変える、などのような、特定の選択圧と特定の形質の進化的変化との対応について紹介しました。しかし、ヒトが持つ形質のなかには、ある選択圧がきっかけとなって進化した形質が…
地球環境が人類を改変する
深野祐也
- 第14回
- 2026年5月1日
前回は、人類が惑星を「改変する」歴史を超特急で学びました。しかし惑星の改変者たる人類には、「改変される」生物としての側面もあり、今回はそこに注目します。人類の祖先がアフリカで暮らした約600万年に比べると、人類がアフリカを出てから現在までの…
超特急の人類史講義
ヒトが惑星の改変者となるまで
深野祐也
- 第13回
- 2026年4月1日
私たちの自然に対する気持ちには偏りがあり、愛する自然や嫌う自然には一貫した傾向があるようです。そして、そのような自然観の偏りは、世界の生物多様性保全を強力に推進したり、非効率にしたりします。しかし、そもそもなぜ私たちの自然に対する気持ちはそ…
「気持ち」でながめる自然保護(後編)
深野祐也
- 第12回
- 2026年3月2日
前編では、人びとが自然にいだく「気持ち」が、環境保全の推進に重要な役割を果たしていることを見てきました。この後編では翻って、「気持ち」が理想的な環境保全を行ううえでの障害となる場合もあることを見ていきます。 愛が保全を偏らせる 自然を大切に…
「気持ち」でながめる自然保護(前編)
深野祐也
- 第11回
- 2026年2月2日
先日、東京都葛飾区にある都立水元(みずもと)公園に行ってきました(図1)。青空の下、広い芝生の上を散歩をするだけで、凝り固まった心と体がほどけていくような安堵がありました。同じような気持ちは、春先の爽やかな風にたなびく麦畑や、水鏡のように静…
農業と進化(後編)
深野祐也
- 第10回
- 2026年1月5日
農作物は育種の賜物、と思われがちです。現代の農作物だけを見ればそれは間違いではないのですが、しかし多くの農作物はもともと、意図しない人為選択の結果生まれたものであり、意図した人為選択である育種が実行され始めたのは意外と最近だった……というこ…
農業と進化(前編)
深野祐也
- 第9回
- 2025年12月1日
農業は現代社会を支えるために必須の営みです。しかし、農業の始まりはそもそもいつでしょうか。今回は、有史以前、人類どころかヒト科霊長類が出現するはるか以前から、農業の始まりを眺めてみましょう。 およそ6600万年前、メキシコ湾に落下した巨大隕…
農業の二面性、その複雑なメカニズム(後編)
深野祐也
- 第8回
- 2025年11月4日
農業とはどのような営みかを扱った本稿。前編では、農業は環境保全にとって最大の脅威であることや、世界で生産される農作物の大部分は家畜の飼料として作られていることなどを紹介しました。農業を、環境を大切にしながら持続可能な形で営む道はあるのでしょ…
農業の二面性、その複雑なメカニズム(前編)
深野祐也
- 第7回
- 2025年10月1日
農業と自然の関係を考えるとき、まず前提としなくてはならないのは、ひとくちに「農業」といっても、どこで、どのように、どんな作物を栽培するかによって、そのあり方は大きく異なるということです。農業は人間の歴史の中でも最も古い営みで、時代とともにそ…
都市で起きる進化(後編)
深野祐也
- 第6回
- 2025年9月1日
都市における進化を取り扱った本稿。前編では、比較的サイズの大きな集団で起こる「適応進化」を詳説しました。一方、比較的サイズの小さな集団には、また別のメカニズムで進化が起きているようです。 偶然による進化 集団中に遺伝的変異があり、特定の変異…
都市で起きる進化(前編)
深野祐也
- 第5回
- 2025年8月1日
都市は、人間社会や経済活動の円滑化を最大の目的として造り出された生態系です。そのため、人間である私たちにとっては、都市はそれなりに快適な環境です。雨が降っても歩きやすい歩道、清潔な居住空間、夜は明るくて安全ですし、長距離を結ぶ車道や線路が整…
都市の生物多様性とその恩恵
深野祐也
- 第4回
- 2025年6月2日
小さな公園の小さな掃除屋 家の周りにどれくらい公園があるか、すぐに挙げることができますか? おそらく、都市部で子育てをしている方なら、5つくらいの公園がすぐに思い浮かぶでしょう。私は子どもができてから、「こんな場所に公園があったのか」と驚き…
生物多様性保全のカギ② 進化生物学
深野祐也
- 第3回
- 2025年4月1日
生態学が「現在の」生物多様性や生物と環境の相互作用を研究する学問であるならば、進化学は、生物多様性や相互作用が生まれた「歴史やそのプロセス」を研究する学問と言えます。進化からの視点は、生態学とは違った側面から生物多様性保全に重要な知見をもた…
生物多様性保全のカギ① 生態学
深野祐也
- 第2回
- 2025年2月3日
世界中で進められている生物多様性の保全や再生は、生態学や進化学と言われる生物学の一分野を学問的支柱としています。これらの学問は、生態系の中の複雑なやりとりを解きほぐし、生物多様性が生まれる歴史やそのプロセスを解明し、人間が自然から受けている…
生物多様性を腑分けする
深野祐也
- 第1回
- 2024年12月2日
はじめに 現在ほど、生物多様性の重要性が注目されている時代はありません。本連載では「なぜ人は自然を守りたいのか?」という疑問に、生物多様性の恩恵(生態系サービス)と気持ちの両面から答えようと試みます。皆さんご存知のように、世の中には、生物多…
著者プロフィール
(最新記事公開時の略歴です)深野祐也(ふかの・ゆうや)
1985年、福岡県生まれ。国立大学法人千葉大学園芸学研究院准教授。専門は生態学。2008年東京農工大学卒。2013年九州大学システム生命科学府博士後期課程修了。九州大学大学院理学研究院、学振特別研究員PD/東京農工大学農学研究院、東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構を経て、2022年より現職。日本生態学会宮地賞(2022年)、科学技術・学術政策研究所「ナイスステップな研究者」(2023年)、千葉大学先進学術賞(2024年)、日本農学進歩賞(2024年)など受賞多数。著書に『世界は進化に満ちている』(岩波書店、2025)、『遺伝子・多様性・循環の科学——生態学の領域融合へ』(分担執筆、京都大学学術出版会、2019)など。共訳書にローゼンブラム『グローバル変動生物学——急速に変化する地球環境と生命』(朝倉書店、2024)。
Xアカウント:@Alien_Evolve