2024年7月に書評掲載された本をご紹介します。
アレックス・ライト『世界目録をつくろうとした男――奇才ポール・オトレと情報化時代の誕生』
鈴木和博訳、 根本彰解説
2024年6月刊
世界書誌、国際十進分類法、世界宮殿、そして「ムンダネウム」。知識ネットワークによる世界平和の実現に挑み、情報学の土台を築いた型破りな奇才の生涯。
- 日本経済新聞 2024年7月13日 評者・山本貴光さん
山本義隆『核燃料サイクルという迷宮――核ナショナリズムがもたらしたもの』
2024年5月刊
日本のエネルギー政策の恥部とも言うべき核燃料サイクル事業は、戦前来の電力中央集権化とナショナリズムの申し子だった。その歴史の精査をもとに脱原発の必要と必然を説く。
- 毎日新聞 2024年7月20日 評者・池澤夏樹さん
エミール・シンプソン『21世紀の戦争と政治――戦場から理論へ』
吉田朋正訳、菊地茂雄日本語版監修
2024年3月刊
英陸軍士官としてアフガニスタンを戦った著者が「戦争という概念」を現代の文脈から問い直す。「本書こそは…クラウゼヴィッツ『戦争論』の終結部と呼ぶに相応しい」(マイケル・ハワード)。
- 週刊読書人 2024年7月5日号 評者・柳原伸洋さん
- 図書新聞 2024年7月6日号(3646号) 評者・奥山真司さん
ジョージ・L・コントレラス『ゲノム裁判――ヒト遺伝子は誰のものか』
上原直子訳
2024年3月刊
「ヒト遺伝子に特許は認められるのか?」一私企業がヒト遺伝子利用を独占する。長く定着していたこの慣行に初めて異を唱えた裁判の、手に汗握るドキュメンタリー。
- 図書新聞 2024年7月27日号(第3649号)「2024年上半期読書アンケート」評者・天笠啓祐さん
ピエル・パオロ・パゾリーニ『パゾリーニ詩集【増補新版】』
四方田犬彦訳
2024年3月刊
異端と醜聞、歴史と性愛の交錯点で20世紀イタリアを駆け抜けた大詩人。生誕100年を過ぎて増す評価と関心に応えるべく詩業の変転をたどる論考を加えた決定版。
- 図書新聞 2024年7月27日号(第3649号)「2024年上半期読書アンケート」評者・土肥秀行さん
ジム・ダウンズ『帝国の疫病――植民地主義、奴隷制度、戦争は医学をどう変えたか』
仲達志訳
2024年2月刊
植民地主義や戦争は疫病を蔓延させた一方で大規模な調査を可能にし、疫学は飛躍的に発展した。奴隷や兵士など、歴史の闇に埋もれた人々が織りなす、疫学誕生の歴史。
- 週刊読書人 2024年7月26日号「2024年上半期の収穫から 44人へのアンケート」評者・田中智彦さん
最上敏樹『国際法以後』
2024年1月刊
ロシアによるウクライナ侵攻、ガザへの大規模攻撃。かくも堂々と破られる国際法とはなんなのか。構造的問題を明示し「後」に来るべきものを探る。
- 朝日新聞 2024年7月20日 書評委員の「夏に読みたい3点」 評者・三牧聖子さん
矢野久美子『アーレントから読む』
2024年1月刊
アーレントから世界を見たとき、何が見えてくるだろうか。その思想の核心を洞察し、混迷を深める世界を生きるための手掛かりを探す。
- 図書新聞 2024年7月27日号(第3649号)「2024年上半期読書アンケート」評者・柿木伸之さん
- 図書新聞 2024年7月27日号(第3649号)「2024年上半期読書アンケート」評者・新城郁夫さん
- 週刊読書人 2024年7月7月26日号「2024年上半期の収穫から 46人へのアンケート」評者・成田龍一さん
ロバート・ダーントン『検閲官のお仕事』
上村敏郎、八谷舞、伊豆田俊輔訳
2023年12月刊
「そもそも検閲とは何か?」ブルボン朝フランス、英領インド、東ドイツの政治体制の検閲を比較しながら、その答えを求める。書物を生み出す力として、検閲が浸透していたことを示す、野心的歴史叙述。
- 週刊読書人 2024年7月26日号「2024年上半期の収穫から 44人へのアンケート」評者・西口拓子さん
山本義隆『リニア中央新幹線をめぐって――原発事故とコロナ・パンデミックから見直す』
2021年4月刊
本書は、安倍政権下で事実上国策化した超伝導リニア計画がはらむ問題を、できるかぎり明確に指摘するという、小さな、具体的な狙いをもつ。それは同時に、なぜこの国では合理性のない超巨大プロジェクトが次々に暴走してしまうのかを浮彫にしている。
- 朝日新聞 2024年7月20日 書評委員の「夏に読みたい3点」 評者・福嶋亮大さん