2025年2月に書評掲載された本をご紹介します。
マイケル・キーン/ジョエル・スレムロッド『課税と脱税の経済史――古今の(悪)知恵で学ぶ租税理論』
中島由華 訳 2025年1月刊
「この本の核心をなす基本的なポイントは、税制のよしあしを定める原則の多くがどの時代にも見てとれるということである」(はしがき)シュメールの粘土板、古代エジプトの課税事情から現代多国籍企業の租税回避まで。博識で、ゴキゲンな租税史。
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東京新聞 2025年2月16日 評者・根井雅弘さん(京都大教授) 「『強制』への反発 逸話満載」
松本莞『父、松本竣介』
2025年1月刊
「そして松本竣介は宝石のようだった。」――奈良美智(本書帯文より)
36歳で没した夭折の画家・松本竣介の生涯と、戦後日本の美術界での受容の歴史を、作品を守りつづけた竣介の次男・莞が丹念に辿った決定版評伝。
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毎日新聞 2025年2月22日 評者・川本三郎さん(評論家) 「『青い絵』を描いた画家とその背景」
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日本経済新聞「あとがきのあと」 2025年2月22日 著者インタビュー 「時代に立ち向かう画家に光 松本竣介の言葉を追う」
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webかたばみ 2025年1月19日 評者・堀江栞さん(画家) 「不手際のエスキース」 第3回 「下塗りの夢」
近藤滋『エッシャー完全解読――なぜ不可能が可能に見えるのか』
2024年12月刊
100点を超える図版で、《物見の塔》《滝》などだまし絵5作の制作過程を分解する。エッシャーが制作中に何に悩み、何を大切にしていたかにまで踏み込んでいく。謎解きの楽しさに満ちた1冊。
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朝日新聞 2025年2月22日 評者・野矢茂樹さん(立正大学教授・哲学) 「作品の謎を緻密に解き明かす名探偵」
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ダ・ヴィンチ 2025年3月号 評者・渡辺祐真さん(文筆家・書評家) 「だまし絵の謎を科学で解き明かし、最後は涙」
チェ・テソプ『韓国、男子――その困難さの感情史』
小山内園子・すんみ 訳、趙慶喜 解説 2024年12月刊
家父長制、植民地化、南北分断、軍政、経済危機、兵役……。「韓国男子」の感情史を近現代史上の事象や流行語を手がかりに辿る。フェミニズムへの応答としての韓国男子論。
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共同通信(沖縄タイムス、下野新聞ほか) 2025年2月2日 評者・周司あきらさん(作家) 「ミソジニー 源泉をたどる」
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週刊東洋経済 2025年2月22日-2025年3月1日合併号 評者・渡部沙織さん(医療社会学者) 「ジェンダー規範の変容「特権」を奪われ不満な男性たち」
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信濃毎日新聞 2025年2月15日 評者・伊藤春奈さん(編集者・ライター) 「日本から学んだ男社会のゆがみ」
松隈洋『未完の建築――前川國男論・戦後編』
2024年12月刊
国立国会図書館、東京文化会館はじめ数々の建築の設計を手がけ、「人間にとって建築とは何か」を問い続けた前川國男。前川自身のことばや関係者の発言、当時の資料を駆使して、その人と作品と時代を鮮やかに描く。
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新潟日報 2025年2月2日 評者・藤井素彦さん(新潟市美術館学芸員) にいがたの一冊「難局避けずに思索を徹底」
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Casa BRUTUS 2025年2月8日 「祝・生誕120周年! 書籍とイベントで前川國男の建築、その人柄を偲ぶ。」
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産経新聞 2025年2月21日 著者インタビュー「モダニズムの旗手・前川國男の言葉と歩く戦後日本」
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毎日新聞 2025年2月26日 著者インタビュー「近代再考、前川國男の孤独 建築界の今を問う 評伝第2弾」
モンティ・ライマン『痛み、人間のすべてにつながる――新しい疼痛の科学を知る12章』
塩﨑香織 訳 2024年11月刊
痛がる脳の最新科学を知り、生物・心理・社会モデルによる新しい疼痛観を知る。痛みとの関係を根本から変える、エキサイティングな学びの書。
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日本経済新聞 2025年2月1日 評者・吉川浩満さん(フリーライター) 「身体を守る安全装置として」
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週刊金曜日 2025年2月7日(1507)号 評者・五所純子さん(文筆家) 「痛みの新しい理解で人を開放する」
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聖教新聞 2025年2月25日 〈読書〉「自らに危険知らせる『保護のしくみ』」
ヤン=ヴェルナー・ミュラー『恐怖と自由――ジュディス・シュクラーのリベラリズム論と21世紀の民主制』
古川高子 訳 2024年11月刊
リベラリズムは時代遅れなのか。ポピュリズムや民主主義の著作で知られる政治学者が、J・シュクラーの議論を指針に、リベラル思想のアップデートを試みる。巻末にシュクラーの論文「恐怖のリベラリズム」全文併録。
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図書新聞 2025年2月22日(3676)号 評者・古田拓也さん(二松学舎大学国際政治経済学部専任講師) 「恐怖の自由民主主義のために――政治理論家ミュラーの反ポピュリズム闘争の一幕」
『恐怖と自由』の詳細はこちら
【新刊紹介】快調に車を運転していたリベラルがピンチに陥る。向こうから逆走車がどんどんやってくるのだ――?
駒込武編『台湾と沖縄 帝国の狭間からの問い――「台湾有事」論の地平を越えて』
2024年10月刊
〈帝国の狭間〉に置かれた人びとが、立場の違いを乗り越え、ともに平和であることは可能か?歴史認識と倫理的価値にもとづく〈同盟〉を模索する対話の試み。
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京都新聞 2025年2月16日 編者インタビュー 「台湾と沖縄を起点に論者8人が現代世界の矛盾問う 「はっきりしているのは我々も当事者ということ」
『台湾と沖縄 帝国の狭間からの問い』の詳細はこちら
【試し読み】台湾と沖縄がともに平和である道はないのか? まえがきを全文公開
カルロ・ヴェッチェ『カテリーナの微笑――レオナルド・ダ・ヴィンチの母』
日高健一郎 訳 2024年10月刊
レオナルドの母はカフカス出身の奴隷だった――新発見の古文書が謎を解く、美術・歴史研究による壮大な歴史小説。イタリアで5万部を超えたベストセラー。
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図書新聞 2025年2月22日(3676)号 評者・渡辺元裕さん(東京大学大学院) 「ある天才芸術家の母親の生涯を通して垣間見る15世紀地中海周辺地域多文化交流史――カテリーナはカフカス出身の奴隷であったとする仮説を世に問うた歴史小説」
トマ・ピケティ『平等についての小さな歴史』
広野和美訳 2024年9月刊
「私はこれまでの研究を要約することにした。本書はその成果である」3000ページの達成を、250ページに凝縮。平等の歴史についての新たな展望をも示す、最良のピケティ入門。
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週刊東洋経済 2025年2月15日号 評者・柿沼 陽平さん(早稲田大学教授) 「不平等の歴史、ピケティ「格差研究」のエッセンス」
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リコー経済社会研究所 2025年2月12日 評者・舟橋良治さん(編集長) 「不平等の是正は夢想なのか…」
ヴィリ・レードンヴィルタ『デジタルの皇帝たち――プラットフォームが国家を超えるとき』
濱浦奈緒子訳 2024年8月刊
自由とテクノロジーを誰よりも愛した者は国家を超える帝国を築いた。デジタル帝国の君主たちの思想的起源や経営手法、そして彼らに抗った人々を、ストーリーとデータで描く。
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労働新聞 2025年2月27日 評者・濱口 桂一郎さん(JIL―PT労働政策研究所長) 【書方箋 この本、効キマス】第101回「デジタル中産階級に希望」
『デジタルの皇帝たち』の詳細はこちら
【新刊紹介】古代ギリシャ・ソ連・デジタル帝国
【コラム】ブックリスト:デジタルの歴史