みすず書房

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2023年、複数の書評で取り上げられた本

2023年12月22日

2023年もみすず書房の新刊を、各新聞・雑誌・ウェブメディアなど多くの媒体でご紹介いただきました。なかでも複数の評者に取り上げられた注目書を、ふりかえってご案内します。

ウィリアム・ノードハウス『グリーン経済学 つながってるけど、混み合いすぎで、対立ばかりの世界を解決する環境思考』

2023年1月刊

  • 『週刊東洋経済』 2023/2/25号 書評より
    「われわれはいっそのこと資本主義を捨てて、経済システムの抜本的な再構築を目指すべきなのだろうか──。こうしたラディカルな考えに性急に飛びつく前に、一度立ち止まって読んでほしいのが本書である。」
    (評者・大阪大学教授 安田洋祐さん)
     
  • 『日本経済新聞』 2023/4/1 書評より
    「本書は従来の経済学が置き去りにしてきた持続可能性の問題に分析を広げ、さらに政策展開している。」
    (評者・東海大学教授 細田衛士さん)

『グリーン経済学』の詳細はこちら

 

ラッセル・ポルドラック『習慣と脳の科学 どうしても変えられないのはどうしてか』

2023年2月刊

  • 『読売新聞』 2023/4/9 書評より
    「行動を変えるといえば、行動経済学のナッジ理論が有名であるが、本書はそれを神経科学の視点で分析しようと取り組んでいる点が類書にあまり見られない特徴である。」
    (評者・東京大学教授 西成活裕さん)
     
  • メールマガジン『ビジネスブックマラソン』 2023/5/18 書評より
    「習慣のメカニズムを解説した、現時点で最高のテキストだと思います。習慣形成や衝動のコントロール、学習などでお悩みの方はもちろん、わが子や生徒を正しい道に導きたい、すべての人におすすめの内容です。単純化され過ぎた本のなかには、成功のための鍵は見つからない。そうわかっている人にぜひ読んで欲しい、骨太の一冊です。」
    (評者・出版マーケティングコンサルタント/ビジネス書評家 土井英司さん)

『習慣と脳の科学』の詳細はこちら

千葉聡『招かれた天敵 生物多様性が生んだ夢と罠』

2023年3月刊

  • 『日本経済新聞』 2023/4/15 書評より
    「千葉聡といえば陸貝(カタツムリ類)の進化と生態の研究者として著名である。しかし、どうして本書のカバージャケットの真ん中にはベダリアテントウのイラストが大きく描かれているのか。450ページもある本書をめずらしくイッキ読みしてその意味がようやくわかった。この本はすごい。」
    (評者・進化生物学者 三中信宏さん)
     
  • 『毎日新聞』 2023/4/15 書評より
    「本書はいわゆる「害虫」に対する防除の歴史を、社会の流れや思想的背景を含めて、そこに関わった研究者たちの評伝を通して、丹念に描いたものである。中心の主題は天敵を利用する生物的防除であるが、著者が繰り返し述べるように、防除は生物的防除の一本槍(いっぽんやり)で済むものではない。」
    (評者・解剖学者 養老孟司さん)

『招かれた天敵』の詳細はこちら

カール・エリック・フィッシャー『依存症と人類 われわれはアルコール・薬物と共存できるのか』

2023年4月刊

  • 『日本経済新聞』 2023/5/27 書評より
    「アルコール依存症から回復した精神科医が書いた依存症の歴史である。縦軸に薬物規制と依存症対策の失敗と成功が、横軸に自身の回復に至る壮絶な道のりが描かれ実録としても読み応えがある。」
    (評者・ノンフィクションライター 最相葉月さん)
     
  • 『毎日新聞』 2023/6/10 書評より
    「本書の記述は、歴史についての叙述の合間に、カール自身の依存症からの回復過程がさしはさまれるスタイルで飽きさせない。また、アメリカにおける依存症の歴史があまりにも波乱に富んでいて、不謹慎ながらこれがめっぽう面白い。」
    (評者・精神科医 斎藤環さん)

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沖縄タイムス編『沖縄の生活史』

2023年5月刊

  • 『週刊東洋経済』 2023/6/3号 書評より
    「壮大な交響曲を聴く思いだ。100人が語る沖縄の戦後史を、2段組み約850ページに収めた。公文書や政治家らの証言による歴史ではない。人々による生い立ちと人生の語りだ。時代々々を生きたその時々の思いが、ぎっちりと詰まって、普通の史書では知ることのできない歴史の重さを教えてくれる。」
    (評者・関西大学客員教授 会田弘継さん)
     
  • 『北海道新聞』 2023/7/9 書評より
    「沖縄は、本土復帰から県民の生活は大きく変化したが、やがて時がたてば異民族に支配された歴史すら忘れられていくのではないか。そんな危機感がこれを書かせたのだろう。いずれの物語も生々しく、打算がないだけによりリアルさが際立つ。」
    (評者・ノンフィクション作家 奥野修司さん)

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トマス・S・クーン『科学革命の構造 新版』

2023年6月刊

  • 『毎日新聞』 2023/7/29 書評より
    「本来は、科学史・科学哲学という、学問の世界では片隅の、むしろ狭小な専門分野での、専門書に入れられるべき書です。それが、著者没後15年以上も経(た)って、出版50周年記念版が刊行されるという異例の事態まで生まれたのは何故だったのか。無論、原著の持つ専門分野への知的刺激が、最大級のものであったことは、大切な理由ですが、それを超えて、一般社会にも、大きな影響を広げた書物だったからです。」
    (評者・東大名誉教授、科学史 村上陽一郎さん)
     
  • 『PRESIDENT』 2023/8/18号 書評より
    「古典を広めるため18年かけて正確さとわかりやすさを追求した見事な新訳でもある。人類の科学革命を通じて認識構造の転換を知りたい知的好奇心に溢れるビジネスパーソンすべてに薦めたい。」
    (評者・京都大学名誉教授、同大学特任教授 鎌田浩毅さん)

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伊藤憲二『励起 仁科芳雄と日本の現代物理学』

2023年7月刊

  • 『読売新聞』 2023/8/6 書評より ※3人の評者による合評記事
    「著者は膨大な書簡や証言から仁科の思考の変遷、研究の苦悩に深く分け入り、「定説」に大幅な修正を迫る。……原爆をめぐる諸問題は長く政治的に扱われがちだった。戦後78年、ようやく日本の科学史が「事実」を積み上げ、原爆開発の内実を世に問うた。」
    (評者・ノンフィクション作家 堀川惠子さん)

    「類を見ない科学史の本である。仁科の生涯に合わせて多様なテーマが語られており、日本の現代物理学の幕開け、科学と戦争、巨大科学のマネジメントの在り方など、どの角度から読んでも面白い。」
    (評者・数理物理学者・東京大学教授 西成活裕さん)

    「日本の科学の励起を可能にした要因は現代でも存在しているだろうか。日本の学術研究がエネルギーを失わないようにするためにも、本書は多くのヒントを与えてくれる。」
    (評者・経済学者・慶応義塾大学教授 牧野邦昭さん)

『励起 仁科芳雄と日本の現代物理学 上』の詳細はこちら
『励起 仁科芳雄と日本の現代物理学 下』の詳細はこちら

 

トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』

2023年8月刊

  • 『日本経済新聞』 2023/10/14 書評より
    「政治家、政策担当者はもとより、選挙を通じて最終的にレジームを選択する現在・将来の有権者に広く本書を薦めたい。」
    (評者・東京大学教授 岡崎哲二さん)
     
  • 『朝日新聞』 2023/10/14 書評より
    「あえて本書を手に取る意味は、その論理の壮大さ、経済史・政治史・文化史を総合し、地球全体の不平等の歴史を語った、まさに次世代の「世界史」を感じることにあるだろう・その意味では、この厚さと重さ(と値段)に臆さず、高校生にも挑戦してもらいたい一冊だ。」
    (評者・武蔵大学教授 神林龍さん)

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アナニヨ・バッタチャリヤ『未来から来た男 ジョン・フォン・ノイマン』

2023年9月刊

  • 『日本経済新聞』 2023/10/28 書評より
    「原題そのままの「未来から来た男」は、フォン・ノイマンの人となりを端的に表している。実際、現代社会のけっこうな部分は彼が創りあげたものと言っても過言ではない。」
    (評者・帝京大学教授 小島寛之さん)
     
  • 書評サイトHONZ 2023/10/5 より
    「コンピュータへの貢献、ゲーム理論やセル・オートマトン理論の想像など、何が必要なのかを把握し、未来からやってきとしかいいようがないぐらい、現代に必要な技術や概念をもたらした男なのである。それはもちろん原子爆弾のような破滅的な産物ももたらしたわけだが、それも含めてわれわれの生活の至るところに彼の痕跡が残されているからこそ、死後70年近くが経つ今でも彼のことを知る意義は大きい。」
    (評者・「基本読書」ブロガー 冬木糸一さん)

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ヴァンサン・ゾンカ『地衣類、ミニマルな抵抗』

2023年10月刊

  • 『日本経済新聞』 2023/11/25 書評より
    「この本の原動力は、むしろ比較詩学的な洞察にある。ポストモダン以降の詩と美術を広範囲に読み込みながら、領域を重層化させ、幾人ものあたらしい美術家や詩人の地衣類的言語を紹介する。」
    (評者・詩人 平出隆さん)
     
  • 『朝日新聞』 2023/12/16 書評より
    「読み始めて呆気(あっけ)に取られた。地衣類の世界がこれほど極彩色で無限の広がりを持っているとは。まず、地衣類は地球という天体でかなりの空間を占めており、地表上の8%にも及ぶという。今日、様々な分野で取り上げられる「共生」という概念も、もとを正せば19世紀に地衣類の連合的な生態に着目したのがきっかけであったらしい。」
    (評者・美術評論家・多摩美術大学教授 椹木野衣さん)

『地衣類、ミニマルな抵抗』の詳細はこちら

11月、12月の新刊書の書評紹介はこれからとなりそうですが、話題になりそうな新刊が目白押しです。ご期待ください。
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