異星からやって来たレプティリアンが、はるか昔にこの地球を支配するようになった。その遺伝子を受け継いだ末裔が「バビロニアン・ブラザーフッド」や「イルミナティー」であり、彼らは現在、世界の出来事を操って人類に恐怖を与え続けている。レプティリアンの血筋には、ロックフェラー家、ロスチャイルド家、英国王室など、多くのエリート一家がいる。彼らは血を飲んだり、子どもをいけにえにする儀式を行ったり、姿を変えたりする。
(『フェイクニュースの免疫学』p. 57)
これは、有名な「レプティリアン陰謀論」です。これを例に、陰謀論的思考が備える7つの特質「CONSPIRE」をご紹介します。
CONSPIREとは、Contradictory(矛盾)、Overriding Suspicion(疑念が最優先)、Nefarious intent(邪悪な意図)、Something must be wrong(何かがおかしいに違いない)、Persecuted victims(迫害の犠牲者)、Immunity to evidence(証拠に対する免疫)、Re-interpreting randomness(偶発事象の再解釈)の頭文字をとったものです。
陰謀論には、CONSPIREの特徴の一部または全部が含まれています。冒頭に提示した「レプティリアン陰謀論」を、CONSPIREに沿って見てみましょう。
まず、矛盾(C)があります。レプティリアンは「はるか昔にこの地球を支配するようになった」にもかかわらず、「恐怖を与え続ける」対象たる人類はいまだに地球にいます。
次に、疑念が最優先(O)の姿勢が見られます。社会的地位のある「ロックフェラー家、ロスチャイルド家、英国王室など、多くのエリート一家」に疑惑をかけることで、常識を疑います。
さらに、邪悪な意図(N)と迫害の犠牲者(P)も明白です。レプティリアンはどういうわけか人類を恐怖に陥れたい。そして被支配者たるわれわれ人類は迫害を受けているのです。これは大変!
そして、証拠への免疫(I)もバッチリです。レプティリアンが世界を支配している証拠が何もないのはなぜでしょうか? それは奴らが、われわれにうかがい知れない方法でうまく隠しているからです。仮に、レプティリアン説に反する証拠があったとしても、それはレプティリアンがわれわれ人類を仲間割れさせるために流したフェイクニュースかもしれません。
最後に、偶発事象の再解釈(Re)の側面もあります。レプティリアンは「世界の出来事を操って人類に恐怖を与え続けて」います。それゆえ大地震やパンデミックの裏側をもう一度考え直してみると、そこにはレプティリアンたちがいるはずです。
「陰謀論的思考」はあまりに便利なので、これからもさまざまな形で応用され、新しい〝陰謀論〟が生み出されることでしょう。ただしここで一点注意しておきたいのが、「すべての陰謀論は信じるに値しないわけではない」という点です。これについて著者は以下のように述べています。
自分に対して陰謀を企てている者がいると考えること自体は、まっとうな証拠にもとづいている限り非合理的ではない。また、権力の座にある者たちには、透明性を求めて説明責任を果たさせるべきでもある。健全な懐疑主義は、科学の営みの核となる価値観だ。
(『フェイクニュースの免疫学』p. 58)
「陰謀論的思考」を憎んで陰謀論を憎まず、と言ったところでしょうか。「陰謀論はすべてウソ」という信念のもとで、「証拠への免疫(I)」を発揮してしまわないようにご注意を。
CONSPIREは「信じ方」の問題なので、陰謀論者の意図は善意の場合も悪意の場合もありえます(本当に地球がレプティリアンに支配されていると考えて啓蒙しているのなら、正義の味方ですよね)。一方次節では、人をだます悪意の手口「DEPICT戦略」についてです。