みすず書房

コラム

ブックリスト:平等と不平等

2024年9月19日

新刊『平等についての小さな歴史』の刊行を機に「平等/不平等」をキーワードとして、これまでに刊行された小社の社会・経済ジャンルの関連書をまとめました。長大な比較史から現代社会の分析、さらには未来にむけた処方箋の提示にいたるまで、公正で平和な社会づくりへのヒントがつまった10冊です。

1. トマ・ピケティ『平等についての小さな歴史』【2024年9月刊】

広野和美訳

「私はこれまでの研究を要約することにした。本書はその成果である。…」(謝辞より)著者自ら、3000ページの達成を250ページに凝縮した、最良のピケティ入門。公正な未来のために、経済学からの小さな贈り物。

2. ブランコ・ミラノヴィッチ『不平等について――経済学と統計が語る26の話』

村上彩訳(2012年刊)

史上最高のお金持ちはだれか? グローバリゼーションで世界は不平等になったのか? 現代のアメリカと古代ローマ帝国の所得格差はどれほど違うのか? などなど、数多くの思い込みを数字で覆し、精確に理解するための必修知識を与えてくれる一冊。

3. アンガス・ディートン『大脱出――健康、お金、格差の起原』

松本裕訳(2014年刊)

経済発展と貧しさの関係について最先端で研究を続けてきた著者が、250年前から現在までを歴史的にたどりながら、成長と健康の関係を丹念に分析することで、格差の背後にあるメカニズムを解き明かす。「消費、貧困、厚生に関する分析」で2015年ノーベル経済学賞を受けた著者による、健康と豊かさの経済学。

4. トマ・ピケティ『21世紀の資本』

山形浩生・守岡桜・森本正史訳(2014年刊)

経済的格差は長期的にどのように変化してきたのか? 資本の蓄積と分配は何によって決定づけられているのか? 所得の分配と経済成長は、今後どうなるのか? 決定的に重要なこれらの諸問題を、18世紀にまでさかのぼる詳細なデータと、明晰な理論によって解き明かす。格差についての議論に大変革をもたらした、世界的ベストセラー。

5. トマ・ピケティ『資本とイデオロギー』

山形浩生・森本正史訳(2023年刊)

「歴史的分析から、ある重要な結論が浮かび上がる。経済発展と人間進歩を可能にしたのは、平等性と教育を求める闘争であって、財産、安定性、格差を聖なるものに祭り上げることではない、ということだ」(「はじめに」)。ベストセラー『21世紀の資本』を発展継承する超大作。中世社会から現代のハイパー資本主義まで、格差をめぐるイデオロギーの世界史。

6. ファクンド・アルヴァレドほか 編『世界不平等レポート2018』

徳永優子・西村美由起訳(2018年刊)

ベストセラー『21世紀の資本』を生み出したデータべースを基に、不平等の最新動向を、全世界の100人以上の研究者ネットワークを駆使して、隔年で報告する年鑑プロジェクト。世界の所得と資産の状況を、革新的な手法で網羅的に分析し、民主的な議論に貢献するための基礎データを提供する。図表多数収録。

7. ジョナサン・モーダックほか 『最底辺のポートフォリオ――1日2ドルで暮らすということ』

野上裕生・大川修二訳(2021年新装版、2011年初版)

最貧国の家計は、収入の「少額」「不定期」「予測不可能」という三重の困難に取り巻かれている。本書は〈ファイナンシャル・ダイアリー〉という聴き取り調査を分厚く積み重ねた研究の成果であり、貧しい人々が編み出した創意工夫の数々をルポルタージュとも言える筆致で描きながら、マイクロファイナンスやインフォーマル金融の実態を分析する。さらに、貧困からの離陸のために金融になにができるのか、新たな道筋を示す。

8. バナジー&デュフロ『貧乏人の経済学――もういちど貧困問題を根っこから考える』

山形浩生訳(2012年刊)

食糧、医療、教育、家族、マイクロ融資、貯蓄……世界の貧困問題をサイエンスする新・経済学。「世界の貧困軽減に対する実験的アプローチ」の研究で、2019年マイケル・クレマーと共にノーベル経済学賞を受賞したバナジー&デュフロ夫妻の主著がこちら。

9. ジェイク・ローゼンフェルド『給料はあなたの価値なのか――賃金と経済にまつわる神話を解く』

川添節子訳(2022年刊)

私たちが労働の対価として受けとる給料。では、その額は、あなたの市場価値の反映なのだろうか? 給料を決定する4つの要因(「権力」「慣性」「模倣」「公平性」)を手がかりに、広く信じられている誤解を解き、給料を上げるための方策と真に公平な賃金制度への道筋を示す。

10. ダニエル・サスキンド『WORLD WITHOUT WORK――AI時代の新「大きな政府」論』

上原裕美子訳(2022年刊)

「技術進歩は僕たちを、人間がする仕事が足りない世界へと連れていく。僕たちの祖先を悩ませていた経済問題は消滅し、かわりに3つの新たな問題と入れ替わっていく。1つめは不平等の問題。2つめは政治的支配力の問題。そして3つめは人生の意味の問題だ」(本書より)イギリスの新進気鋭の経済学者が、21世紀の〈所得分配国家〉〈資本分配国家〉〈労働者支援国家〉を描き出す。テクノロジーと平等について考えるヒントをくれる本。