この11月に、新刊『トクヴィル選集』を刊行いたしました。今回のブックリストには、本書とあわせて改めて目を向けていただきたい、トクヴィルの思想や民主主義のあり方をテーマとするみすず書房の本を集めました。
1. 『トクヴィル選集』
富永茂樹編監訳【2025年11月最新刊】
アレクシス・ド・トクヴィルは、『アメリカのデモクラシー』『アンシァン・レジームとフランス革命』の二著で有名な政治思想家・法律家・政治家。本書は、その二著からだけでは読み解けないトクヴィルの活動と思索の射程の深甚さを伝える、論文、演説、旅行記と書簡を精選して編集、翻訳したもの。構想から25年近くを経て刊行されたこの選集は、混迷きわまる政治状況を眺める視座を、現代人に提供するものである。
2. 『トクヴィルで考える』
松本礼二(2011年12月刊)
『アメリカのデモクラシー』の翻訳を手掛けた松本礼二氏による、トクヴィルとその思想に関する論考集。19世紀後半を生きた思想家であるトクヴィルを、現代のわれわれはどう理解するべきか。本書は、『アメリカのデモクラシー』『アンシャン・レジームと革命』の二著の読解から、書簡、資料、伝記研究までを通じて、その足掛かりを提供してくれる。新刊『トクヴィル選集』を読み解くためのヒントにもなる。
3. 『回想のケンブリッジ――政治思想史の方法とバーク、コールリッジ、カント、トクヴィル、ニューマン』
半澤孝麿(2019年5月刊)
本書は、ケンブリッジ学派に多くを学んできた政治思想史家のモノグラフを編んだもの。第五章「キリスト教思想家トクヴィル」で展開されるトクヴィル分析は斬新だ。トクヴィルの「摂理」や神への言及についての従来の解釈に対して、「そこには実は、たんなるレトリックまたは手段以上の、彼自身の実存にも関わる、実質的なキリスト教的、それもカトリック的意味が込められていたのではないか、また、そのことにおいて彼のデモクラシー論は、中世以来の自由意志説の、十九世紀における最も正統な継承者であり、また、彼の自由論が継承された限り、二十世紀以降の政治思想へのその伝達者なのではないか、という仮説を立て、それを裏付けしてみたい」(本文より)。
4. 『デモクラシーの現在地――アメリカの断層から』
青山直篤(2022年10月刊)
「生起するできごとに圧倒されたときは、1830年代のアメリカを歩き、その特質を分析したフランスの思想家アレクシ・ド・トクヴィル(1805~38)の『アメリカのデモクラシー』を読み返していた。「アメリカの中にアメリカを超えるものを見た」と記したトクヴィルが教えるのは、真摯なまなざしを投げかける外国人に、この国は驚くほど率直に実像を現すということである」(本文より)。2018~2022年の4年間、朝日新聞の特派員として激動のアメリカを取材した著者による報告。さまざまな現場や、思想家のもとを訪れ見聞する様子はまさに、トクヴィルの見聞録を彷彿させる。
5. 『自由の国と感染症――法制度が映すアメリカのイデオロギー』
ヴェルナー・トレスケン 西村公男/青野浩訳(2021年12月刊)
天然痘、腸チフス、黄熱病という3つの歴史的感染症に、自由の国アメリカはどのように対処したのかを描き出した本書。国家としての感染症との闘いのありようは、その法制度が大きくかかわってくる。合衆国憲法の起草者たちが記した『ザ・フェデラリスト』や、トクヴィル『アメリカのデモクラシー』の記述を導きに、個人や商業の自由とワクチン接種義務や検疫という自由を制限する措置とがどう影響し合ったかを示す歴史を眺め、世界各国の国家構造と公衆衛生との関係を考える手がかりを提供する。
6. 『アメリカの反知性主義』
リチャード・ホーフスタッター 田村哲夫訳(2003年12月刊)
「反知性主義」についての本。「反知性主義」という言葉の使われ方は錯綜しがちだが、この語と概念についての基本文献として、知識人こそ改めて手に取ってほしい一冊。アメリカの気風を描く本書に、トクヴィルもたびたび登場する。アメリカのいわば部外者であるトクヴィルの言葉が、本書で説かれるアメリカの空気を理解しやすいものにしている。
7. 『民主主義のルールと精神――それはいかにして生き返るのか』
ヤン=ヴェルナー・ミュラー 山岡由美訳(2022年8月刊)
民主主義は危機にある、と取りざたされるいま必要なのは、「そもそも民主主義とはなんであるか」を問うことだ、と本書は説く。いま世界中で起こっている数々の問題と、民主主義について論じたさまざまな思想家の見解とを引きながら、改めて民主主義の原理の正体を探る。トクヴィルは本書の主役ではないが記述の端々に顔を出し、その鋭い洞察が著者の筆致を強固にしている。
8. 『民主主義の人類史――何が独裁と民主を分けるのか?』
デイヴィッド・スタサヴェージ 立木勝訳(2023年11月刊)
本書は、デモクラシーの来し方を紀元前にまでさかのぼり、ヨーロッパや中東、アフリカにアジア、そしてアメリカと、世界中のデモクラシーの痕跡と記録を渉猟して分析したもの。デモクラシーのさまざまなあり方とその「進化」を促した環境を見てゆくという意味で、「デモクラシーの進化史」と捉えることもできる。「今日のわたしたちのデモクラシーは、ものごとを組織するうえでのひとつの可能性にすぎない。ひとたびこのことが認識できれば、デモクラシーが将来どのように進化していくのか、その姿が少しは見えてくるのではないだろうか」(本文より)。







