みすず書房

超ひも理論が予言する10の500乗種類の宇宙

超ひも理論が予言する10の500乗種類の宇宙

物理定数の値はどのような仕組みで決まっているのか?

前回までに解説したように、私たちの宇宙の物理定数は生命にとって非常に都合のよい値を取っているように見え、この不自然さは物理定数の「微調整問題」と呼ばれている。物理定数とは、物理法則に登場する定数のことで、電子などの素粒子の質量や、素粒子の間に働く力の強さ、真空のエネルギー(真空の空間自体がもつエネルギー)の値などのことだ。

これらが今の値からズレていたら、「宇宙の歴史の中で炭素が合成されなかった」、「宇宙の膨張速度が速くなりすぎて、天体は誕生しなかった」といったように、生命が誕生するうえで様々な不都合が生じたはずだと理論的に指摘されている。私たちが住む宇宙がこの世界で唯一の存在なのだとしたら、その宇宙が生命にとって都合のよい条件を備えているのは、非常に不自然だということになる。

この問題を解決するのが、「宇宙は無数に存在する」と考えるマルチバース宇宙論である。「無数の宇宙ではそれぞれ物理定数が異なっている」と考えると、その中には生命にとって都合のよい条件を備えている宇宙も少ないながら存在するはずだ。それが私たちの宇宙だとすれば、不自然さは解消される。

では、宇宙ごとに物理定数が異なっているのなら、いったいどのような仕組みでその値は決まっているのだろうか?

一般相対性理論と量子論を統合する「超ひも理論」

実は現在確立している物理学の理論では、物理定数がなぜその値を取っているのかは説明できない。物理定数の値は、実際に測定して知る以外の方法が今のところないのである。

しかし、その説明を可能にするかもしれない理論がある。素粒子の正体を「振動するひも(弦)」だと考える「超ひも理論(超弦理論)」だ。超ひも理論は、現代の物理学の土台となっている一般相対性理論(マクロな世界の重力についての理論)と量子論(ミクロな世界の理論)を統合することができるとされている理論である。世界中の数多くの理論物理学者たちが活発に研究しており、「万物の理論」や「究極の理論」と称されることもある。

ただし超ひも理論は未完成の理論だ。現在は近似的な数式で理論が構築されており、理論の完成には近似を含まない形に理論を整える必要がある。また、実験による検証も当然必要だ。超ひも理論は現在までに実験的な検証ができていないのである。

そういった限界はあるものの、超ひも理論は一般相対性理論と量子論を統合できる可能性をもつ、ほとんど唯一の理論だとされ、支持している研究者も非常に多い。

以下では、超ひも理論に基づいて、物理定数の値がどのような仕組みで決まっていると考えられているのかについて、見ていこう。

物質を形づくっている素粒子の仲間は計12種類

身のまわりのあらゆる物質は原子でできているが、原子はこの世界の最小の部品、つまり「素粒子」ではない。素粒子とは、それ以上、分割することができないと考えられている粒子のことだ。

原子は、電子とアップクォークとダウンクォークという三つの素粒子でできている(図1)。身のまわりのあらゆる物体は、この3種類の素粒子でできているのだが、実は自然界にはまだ他にも素粒子がたくさん存在している(図2)。

 

素粒子にどのような種類があるかを駆け足で見ていこう。たくさんの素粒子名や分類名が登場するが、あまり気にせずに読み進めていただきたい。

電子の仲間は「レプトン(軽粒子)」と呼ばれ、6種類存在している。電子に加え、電子と同じマイナスの電気を帯びたミュー粒子(ミューオン)とタウ粒子、そして電気を帯びていない中性の素粒子である電子ニュートリノ、ミューニュートリノ、タウニュートリノである。

クォークの仲間も6種類存在している。アップクォーク、ダウンクォーク、チャームクォーク、ストレンジクォーク、トップクォーク、ボトムクォークの六つだ。

これらは物質を形づくっている素粒子の仲間であり、「フェルミ粒子」と呼ばれる粒子に分類される(1)。物質を形づくっている素粒子の仲間は、計12種類あることになる。

原子を形づくっている電子とアップクォークとダウンクォーク以外は、基本的に身のまわりに存在していない。ただし、宇宙から飛来してくる高エネルギーの放射線(宇宙線)が大気に衝突する際や素粒子レベルの実験などによって、短い時間だけ存在することが確認されている。「短い時間だけ存在する」とは、不安定なのですぐに他の粒子に変化(崩壊)してしまう、という意味だ。

力を伝える素粒子は計5種類

実は素粒子の間に働く力(相互作用)も、素粒子によって伝えられていることが分かっている。力を伝える素粒子は、「ボース粒子」と呼ばれるものに分類される(2)。フェルミ粒子は、同じ場所には一つしか存在できないが、ボース粒子は、同じ場所にたくさん詰め込むことできるという性質の違いがある(3)

素粒子の間に働く力には、「電磁気力」、「弱い力」、「強い力」、そして「重力」の4種類がある。電磁気力を伝える素粒子は、光の素粒子である「光子」である。弱い力を伝える素粒子は「Wボソン(W粒子)」と「Zボソン(Z粒子)」、強い力を伝える素粒子は「グルーオン」、重力を伝える素粒子は「重力子」と呼ばれている。なお、重力子は実験によって見つかっておらず、理論的にその存在が予想されている、という段階である。

電磁気力とは電気と磁気の力のことだ。弱い力は、放射性物質がベータ線(高速の電子)という放射線を発するときなどに働く力である。強い力は、クォークどうしを結びつけ、陽子や中性子を形づくっている力である。

重力は、別名「万有引力」とも呼ばれる力で、天体どうしに働く力や、地球が地上の物体を引っ張っている力だ。重力というと、天体クラスの大きな物体で働く力というイメージがあるかもしれないが、基本的には質量をもつあらゆる物体の間で働く引力である。実験的に確かめられているわけではないが、例えば電子どうしも重力で引き合っていることになる。

重力は他の力と比べて極めて弱いという性質がある。そのため、素粒子間で働く重力は、さまざまな実験結果を説明する際には無視できる。

重力が弱いと聞いて意外に感じた読者もいるかもしれない。しかし、小さな磁石でクリップを持ち上げられることを思い出してもらえば、重力の弱さが実感できるはずだ。この現象は、手のひらに収まる小さな磁石による磁力が、巨大な地球による重力に打ち勝って、クリップを持ち上げている、ということを意味している。

素粒子の数は意外に多い!

これらに加えて、もう一つ異色の素粒子もある。それが「ヒッグス粒子」だ。詳しい説明は省くが、ヒッグス粒子は、素粒子の質量を生み出す素粒子だと言える。

以上をまとめると、素粒子には18種類あることになる。ここまで読んできて、「素粒子の種類って意外に多いな……」と思われた読者もいるのではないだろうか。実は、これらに加えて、未発見の素粒子の存在がさらにいくつも予言されている。

特に存在が確実視されているのは、「ダークマター」の素粒子だ。宇宙に大量に存在する目には見えないダークマターの総質量は、通常の原子でできた物質の約5倍に達するとされており、その正体は未知の素粒子だと考えられている。

あらゆる素粒子は「同じひも」でできている?

上の図では、素粒子を大きさをもつ球のように表現したが、実は現在の物理学では、素粒子は大きさのない「点」だと考えられている。つまり直径ゼロで体積もゼロだということになる。素粒子が本当に大きさのない点なのかどうかは、実験的には確かめられていない。しかし、さまざまな理論的な計算は、素粒子を大きさのない点だとみなして行われているのだ。

これに対して超ひも理論では、「あらゆる素粒子は同じひもでできている」と考える。ひもといってもその長さは極めて短く、10のマイナス35乗メートルほど、つまり1ミリメートルの1兆分の1の1兆分の1のさらに1億分の1ほどだと考えられている。原子の大きさが10のマイナス10乗メートルほど、原子核の大きさが10のマイナス15乗メートルほどなので、原子や原子核と比べても圧倒的に小さいことになる。これだけ小さいと、素粒子物理学の実験でも長さがあるようには見えず、点にしか見えない。そのため、物理学者たちはこれまで素粒子が長さをもつひもであることに気づいていなかったのかもしれないのである。

ギターなどの弦楽器は、一つの弦から様々な音色を生じさせることができるが、超ひも理論では、それと同じようにひもが振動の仕方を変えると、私たちには異なる素粒子のように見える、と考える。前述のように既にたくさんの種類の素粒子が見つかっているわけだが、超ひも理論では、これらを1種類のひもで説明することができる(4)

超ひも理論が正しいなら、六つの次元が隠れていることになる!

超ひも理論はこの世界についてとんでもない予言をしている。この世界は、本当は「9次元空間」だというのだ。私たちの目に見える空間は、縦・横・高さの三つの方向に広がっている3次元空間のはずだ。しかし、超ひも理論が正しいのなら、さらに六つの次元がどこかに隠れていることになる。この隠れた次元は「余剰次元」と呼ばれている。

そもそも空間の次元とは何だろうか? 簡単に言えば、「ある物体の位置を特定するのに必要な座標の数」ということになる。x軸、y軸、z軸の3本の座標軸を垂直に交わるように配置すれば、空間上のあらゆる点はx座標、y座標、z座標の三つの数で表すことができる。そのため、私たちの住んでいる世界は3次元空間だとされているわけだ。

余剰次元がなぜ見えないのかについての有力な考え方は、「余剰次元は小さく丸まっているために見えない」というものだ。

細い糸を考えてみよう。遠くから見ている分には、糸の上にいるノミの位置は適当に決めた原点からの距離という一つの数で表すことができる。つまり糸は1次元に見える。しかし、糸を拡大していくと、糸には太さがあって、実際は円筒状になっており、ノミはその表面を移動できることが分かる。ノミの位置を特定するには、横方向の座標に加え、円周上のどこにいるかというもう一つの座標を決める必要があるわけだ(図3)。つまり、糸の表面は2次元だということになる。

このように次元が小さく丸まっていれば、遠くから見ている分にはその存在に気づかない。超ひも理論における余剰次元もそのようなものだと考えられているのである。

余剰次元は慣れないとなかなかイメージすることが難しい。糸の例と同じように、余剰次元のうちの一つが小さい円のように丸まっているとしよう。すると、そのような余剰次元は、図4に示したように3次元空間のあらゆる点に円がくっついている、というイメージになる。余剰次元は3次元空間の“外”に広がっているので、本来は絵に描けない。そこで図4では、3次元空間を1次元減らして2次元の面として描いている。また、図では、網目の交点の一部のみに円をくっつけているが、実際は、交点以外のあらゆる点にも円がくっついていることになる。

余剰次元は、SFで登場する「高次元」や「異次元」とほぼ同じ意味だ(作品によってニュアンスが異なるかもしれないが)。高次元や異次元というと、何やら私たちの住む世界と別の世界の話のように思えるかもしれないが、超ひも理論における余剰次元とは、まさに私たちの住む世界の話である。余剰次元は遠く離れた世界の話ではなく、私たちがいる、まさにココに隠れていることになるのだ。

余剰次元の“形”が物理定数の値に影響を与える

ところで次元が「丸まっている」とはどういう意味だろうか? 糸の上のノミの例で考えてみると、円周方向は一定距離進むと元の位置に戻ってくることが分かる。このようにある距離進むと元の位置に戻ってくるような次元を「丸まっている」と表現するのである。これは連載の第2回で登場した「昔のロールプレイングゲームのマップ」で出てきた話と同じだ。超ひも理論に出てくる余剰次元は、これと同じことが極めて小さなスケールで起きていると考えるわけだ。

余剰次元が二つある場合は、3次元空間のあらゆる点に球面のような2次元の面がくっついているイメージになる(図5)。ただし、余剰次元の形は球面に限らない。例えば、ドーナツのように穴があいた形になっている可能性もあるし、穴が二つあいた形になっている可能性もある。余剰次元は様々な形を取りうるのである。

前述した通り、超ひも理論では、六つの余剰次元を考える。六つの余剰次元の形(6次元の超立体)をそのまま絵にすることは不可能だが、数学を使って記述することはでき、その形には様々なバリエーションがあることが分かっている。

超ひも理論と余剰次元の話が長くなってしまったが、ようやくここで物理定数の話に戻る準備が整った。実は、この六つの余剰次元の「形」(5)によって、物理定数が変化すると考えられているのだ。つまり余剰次元の形が変われば、存在する素粒子の種類やその質量、素粒子の間に働く力の種類、そしてそれらの力の強さなどが変わる、ということになる。

例えば、公園の形が変われば、子供たちの遊び方も変わるだろう。長方形の公園ではサッカーはできても、野球はやりづらい。六つの余剰次元でできた空間もこれと似ている。余剰次元の形は、ひも(素粒子)の運動の仕方などに影響を及ぼすのだ。

「超ひも理論のランドスケープ」と10の500乗種類の宇宙

さて、物理定数が余剰次元の形によって決まるとして、私たちの宇宙の余剰次元の形はどのようにして決まったのだろうか。ここで登場するのが、前回の主役でもあった、空っぽの空間に満ちている「真空のエネルギー」である。

真空のエネルギーは、中学校や高校の物理で習う、「位置エネルギー」と似ており、なるべく小さな値を取ろうとする性質がある。地上の物体は、地球の重力の影響によって、高い位置にある方が位置エネルギーが大きい。そのため、物体はなるべく位置エネルギーの小さい方、すなわち地上に向けて落下しようとするのである。

真空のエネルギーも物理定数の一つなので、余剰次元の大きさや穴の数などの多数の変数によってその値が変わる。そのうち、適当な二つの変数をx軸とy軸にして、真空のエネルギーの大きさをz軸に取って模式的に表したのが図6である。このようにして真空のエネルギーを表した図は、山あり谷ありの複雑な形になる。このような図は、「超ひも理論のランドスケープ」と呼ばれている。

このランドスケープにボールを投げ入れることを考えてみよう。ボールはどこかの斜面に当たって、そこから斜面を転がり落ちることになる。そして最終的には、谷に相当する部分に達してそこで落ち着くことだろう。

宇宙(泡宇宙)の真空のエネルギーの値が決まる仕組みもこれと似ている。宇宙がランドスケープのどこから始まったとしても、いずれ谷に相当する場所で落ち着くことになる。谷にいったん落ち着くと、そこにとらえられ、真空のエネルギーはその値に決まる。谷の座標は、余剰次元の形を決める変数と対応しているので、谷に落ち着くと余剰次元の形も決まることになる。つまりそれぞれの谷は、余剰次元の形や真空のエネルギーの値が異なる別々の宇宙に対応するのである。

図6は、余剰次元の形を決めるたくさんの変数の中から二つだけを取ってきて描いた概念図だ。実際の超ひも理論のランドスケープは、絵には描けないが図6の多次元版ということになる。つまり、x軸、y軸だけではなく、多数の座表軸が存在するものになるわけだ。

理論的な研究によると、超ひも理論のランドスケープには、大まかな見積もりとして10の500乗個以上もの谷が存在すると考えられている。つまり、余剰次元の取りうる形や真空のエネルギーには10の500乗種類以上もの選択肢があるということになる。10の500乗というのは、とてつもなく大きな数だ。1兆が10の12乗なので、10の500乗は1兆を約42回掛け合わせた数ということになる。

マルチバースの中で、10の500乗種類の泡宇宙が実現する

さてここで、第5回で取り上げた永久インフレーション(宇宙の急激な膨張)に基づいた無数の泡宇宙(マルチバース)の誕生の話を思い出そう。

ランドスケープの谷にいる泡宇宙(谷の座標で決まる余剰次元の形をもっている泡宇宙)のうち、高い真空のエネルギーをもっているものは、インフレーションを起こし、急激に大きくなっていく。この泡宇宙がランドスケープの谷に永遠に落ち着いているなら、話はここで終わりだ。この泡宇宙は永久にインフレーションを続け、そこには星や銀河などの構造は生まれず、生命も生まれないだろう。

ここで重要な役割を果たすのが、第3回でも取り上げた量子論の「トンネル効果」だ。ランドスケープの谷に位置する泡宇宙の一部の領域が、まれにトンネル効果によって山をすり抜け、反対側の斜面に出ることがあるのだ(図7)。そうすると、その斜面を転がり落ち、近くの別の谷に再び落ち着くことになる。

これは元の泡宇宙(真空のエネルギーが高い領域。図7の左側の谷)の中に、別の泡宇宙(真空のエネルギーが低い領域。図7の右側の谷)が生じたことに相当する。最初にいた谷と異なる座標の谷に移ったので、そこでは余剰次元の形も異なっていることになる。余剰次元の形が異なっているということは、物理定数も異なるということだ。こうして泡宇宙の中で、物理定数の異なる別の泡宇宙が生じるのである。

このようなプロセスは無数の泡宇宙のそれぞれの中で、何度も何度も繰り返されることになる(図8)。一旦、谷に落ち着いた泡宇宙も未来永劫、その状態が続くわけではない。いずれトンネル効果によって斜面をすり抜け、別の谷に向かって落ちて行くことになるからだ。こうして、インフレーションとトンネル効果によって、親宇宙のあちこちに泡宇宙が生まれ、その泡宇宙の中でさらに別の泡宇宙が生まれ……ということが永遠に繰り返され、最終的にはランドスケープのすべての谷に相当する宇宙が生まれることになる。

こうして、真空のエネルギーの値が異なる10の500乗種類以上の泡宇宙が生まれると、その中には、私たちの住む泡宇宙と同じように、真空のエネルギーの値がゼロよりもほんの少しだけ大きい泡宇宙も含まれるはずだ。また、物理定数が生命にとって都合のよい値を取っている泡宇宙も存在するだろう。そうした泡宇宙の一つが私たちの宇宙だということになる。こうして、私たちの宇宙の物理定数の微調整問題が、超ひも理論とマルチバース、そして人間原理の考え方を組み合わせることで解決できることになる。

以上の議論は、超ひも理論とインフレーション理論(の永久インフレーションモデル)に基づいているが、注意しておきたいことは、これらの理論自体がまだ仮説の段階だということである。これらの理論を数多くの物理学者が支持しているのは事実であるものの、今後、実験や天文観測などで検証を行っていく必要がある。これらの検証方法についてはまた後の回で紹介することにしよう。

第8回の要点

  • 超ひも理論は、あらゆる素粒子の正体を同じひもだと考え、ひもの振動状態が変わると、異なる素粒子に見える、と考える。
  • 超ひも理論は未完成の理論だが、マクロな世界の重力理論である一般相対性理論と、ミクロな世界の理論である量子論を統合する理論の有力候補である。
  • 超ひも理論によると、この世界は実は9次元空間で六つの余剰次元が隠れている。
  • 余剰次元は様々な形を取ることができ、余剰次元の形が変わると、マクロな3次元空間における物理定数の値が変わる。
  • 余剰次元の形には10の500乗種類以上のパターンがあるとされており、そのそれぞれで真空のエネルギーの値を含む物理定数の値が異なっていると考えられている。このような考え方は、「超ひも理論のランドスケープ」と呼ばれる。
  • 超ひも理論のランドスケープと、永久インフレーションによるマルチバースのシナリオ、そして人間原理の考え方を組み合わせると、真空のエネルギーなどの物理定数の微調整問題を解決できる。

 

  1. フェルミ粒子とは、「スピン」という量が、基準となる値の半整数倍(1/2、3/2、5/2 ……)の粒子のことである。素粒子が複数集まってできた「複合粒子」のフェルミ粒子もある。
  2. ボース粒子とは、スピンの量が基準となる値の整数倍の粒子のことである。複合粒子のボース粒子もある。
  3. より正確に言うと、フェルミ粒子は同じ量子状態(量子論によって記述される状態)を占めることができるのは一つだけであり、ボース粒子は同じ量子状態を多数の粒子が占めることができる。
  4. ひもには、両端がある「開いたひも(開弦)」と、両端がくっついて環状になった「閉じたひも(閉弦)」の2種類の状態がある。開いたひもは閉じたひもにもなれるし、閉じたひもは開いたひもにもなれるので、根源的には同じものだと言える。
  5. より正確に言うと、余剰次元の中に存在する無数のひもでできた「ブレーン」と呼ばれる物体の数や配置の仕方、「フラックス」と呼ばれる磁力線のようなものの数などによっても物理定数が変わる。本記事ではこれらも含めて「余剰次元の形」と表現している。