みすず書房

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みすず書房「特設サイト」のご紹介

2023年9月25日

この春から夏にかけて、小社ウェブサイトにて新刊3点の「特設サイト」を公開いたしました。
いずれも900頁を超える大著のため、まずはウェブ上で本の概要や内容の一部についてお知らせすることで、皆様に手にとっていただくきっかけになれば、という思いで制作したものです。ここでは、それぞれのページのみどころについて、あらためてご紹介申し上げます。

5/12刊◆『沖縄の生活史』

沖縄タイムス編/石原昌家・岸政彦監修

2022年5月15日「日本復帰の日50年」を迎えた沖縄。
この節目の年に、沖縄タイムス紙で5月から12月まで連載された新聞記事が、本書のもとになっています。
(新聞掲載85人の語りに、新たに15人の聞き書きを加えて書籍化)

「1972年5月15日の「復帰の日」に何をしていましたか?」

生活史の聞き取りに参加した方々は、この共通の質問に対して100人100様の「語り」で答えます。
誰かに聞かれるまで、家族であってもいちども話したことのなかった生の体験が、100編集まることで浮かび上がる「沖縄の現代史」。
そのリアリティを、ぜひ本書を通じて感じていただきたいです。

『沖縄の生活史』特設サイト内で特におすすめしたいのは、聞き取りに参加した現場を映した映像(6分10秒)と、
サイト内にリンクが張られている、QAB琉球朝日放送 NEWS CATCHYで放送された本書についてのニュース映像(約12分)です。

実際の語りのようすを見てから本書を読むことで、立体的に感じられるものがあると思います。ぜひ本書とあわせてご覧ください。また、本書の読み方としては、1日1ページずつ、一人ひとりの声を聴くように、少しずつ読み進めるのもおすすめです。

8/10刊◆『第二次世界大戦』

ウィンストン・チャーチル 著/ジョン・キーガン 序説/伏見威蕃 訳

原著の刊行は1948年から1954年。ノーベル文学賞を受けた、英国の名宰相チャーチルの主著である歴史書『第二次世界大戦』。
その完訳版を6年かけて出版するプロジェクトが今夏スタートいたしました。

本書の特設サイトでは、今後の刊行予定と、合わせて一枚の写真が現れる全巻の背表紙を並べたデザインがご覧になれます。
またページ内「試し読み!」からは第1巻所収の著者による序文全文と、本文の抜粋を公開中です。

「過去について熟慮することが、今後の歳月の指針となり、新しい世代が何十年も前の過ちを修復して、人間がほんとうに必要とする物事と栄華に則り、未来におぞましい光景がくりひろげられるのを抑制することを、私は心の底から願っている」(序文より)

戦争という言葉が日々の報道にあらわれる2023年現在、多くの方に手にとっていただきたい歴史書です。

また、来年生誕150年を迎える政治家チャーチルという人物を学ぶにあたり、おすすめの評伝や関連書について、訳者の伏見威蕃氏による「あとがき」に多数紹介されています。
ぜひこちらは第1巻『湧き起こる戦雲』を店頭でお手にとってご覧ください。

8/22刊『資本とイデオロギー』

トマ・ピケティ 著/山形浩生 訳/森本正史 訳

2014年に刊行され、世界的ベストセラーとなった経済学書『21世紀の資本』。
その内容を発展継承する形で、より長いタイムスケールで、より広い地域のデータを集めて著されたのが本書『資本とイデオロギー』です。

前作『21世紀の資本』のあらすじと議論のポイント、本書『資本とイデオロギー』との比較については、訳者の山形浩生さんのブログ「経済のトリセツ」の記事「読書ガイド」に、くわしく記載があります。『資本とイデオロギー』を読む前に、こちらもぜひご覧ください。

また著者のトマ・ピケティ氏自身、本書で伝えたかったことをPDF資料の形でまとめて、ホームページで紹介しています。
その日本語訳が、訳者の山形氏のサイトにある「補遺(日本語版)」で読めますので、こちらも理解を深めるのにはうってつけです。

「もっと公正で平等主義的な社会は常に可能なのだ」(22ページ)

公正な社会とは何か。それはどうしたら実現できるのか。
本書は経済学の棚に置かれている本ですが、著者自身は、この大きな問いに向かって「経済学、歴史学、社会学、文化研究、政治学」のアプローチを組み合わせることが必要だと述べています。
ぜひ、社会の格差問題に取り組む多分野の研究者の方々、法・行政にかかわる職業の方々にも手に取っていただきたい一冊です。

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このほか、書評やメディア紹介情報など、上記特設サイトで随時更新してまいります。
みすず書房ウェブサイトのトップページ「特集」リンクからご覧になれますので、本書をご購入された方も、読書の一助としてご覧くださいますと幸いです。