本書はもともと、月刊雑誌『みすず』で連載されていた記事を書籍化したものです。雑誌連載時の記事がTV番組『情熱大陸』のディレクターの目に留まり、取材が行われて2023年8月に放送されました。番組は、ワニの迫力ある映像から著者の仕事の様子とその哲学までがよくまとまった印象的なものでしたから、記憶にある方もいるかもしれません。
著者の福田氏は現在、オーストラリアはノーザンテリトリー準州で、野生ワニの保護管理の仕事に従事しています。高校生のときにテレビに映ったワニとその研究者をみて、雷に打たれたように「自分もこの人のようになるのだ」と思い、オーストラリアに行くことを決意したそうです。彼がワニを研究している理由は、何度聞いても、本当にそれだけです。なぜかワニに魅せられたから、というシンプルな理由は、そのまま福田氏自身の魅力であるように思います。
では、高校生だった福田氏がオーストラリアに行こうと決意して、まずどうしたかというと、オーストラリアの大学に進むことを目標に据えました。日本の大学で生物学を学び、ゆくゆくは……と考える人が多そうなところ、彼はまっすぐにオーストラリアを目指したのです。このようにキッパリハッキリと目標に向かう姿勢は福田氏の人生に通底しており、読者はそこから目を離せず、引っ張られるようについ読み進めてしまう……本書はそんな魅力のある本です。
本書の冒頭には、著者の次のような言葉があります。
「好奇心旺盛な読者にいくばくかの興味を持って読んでもらえるならありがたい。さらにはどんな分野であれ、将来を模索している若い方々に反面教師の材料なり、何らかのヒントや参考なりにしてもらえるならば、筆者としてこれほどうれしいことはない」。編集担当者としては、この本はまさに、将来を模索している若い方々にモチベーションを与えることができる本だ、と自信を持って言えます。
書店の店頭で、お手に取っていただけましたら幸いです。
「情熱大陸」ワニ研究家 福田雄介編(2023年8月13日)の未公開映像(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=zf4rccQ2Bds
