今年のみすず美術カレンダーMISUZU CALENDARをお持ちの方は、11月・12月のカレンダーで、アルフレッド・ウォリスの絵に接することができる。
テーマは「ナイーヴ・アートの世界」。ナイーヴ・アート(素朴派)とは、正式な美術教育を受けたことのない作家によって制作され、独学ゆえにかえって素朴さや独創性が際立つ作品のことである。カレンダーには船員・船具商のウォリス(イギリス)のほか、靴職人のO・メテルリ(イタリア)、郵便配達夫のL・ヴィヴァン(フランス)、主婦のP・モーダーゾーン = ベッカー(ドイツ)、農民運動家のM・ヴィリウス(クロアチア)、整備工のC・バジール(ハイチ)、下級官吏のH・ルソー(フランス)、農民・奴隷のB・トレイラー(アメリカ)を選んだ。どれも色彩感に富み、遠近法や構図などおかまいなしに、描きたいものを描きたいように描いた絵ならではの、爽快感にあふれている。
ウォリスも、そんな絵だ。カレンダーの絵をとっても、手前の船と奥の犬の大きさのバランスがおかしいが、じっと見ていると、実はそのほうが自然なように感じられ、技法や技術に囚われた絵のほうがかえって窮屈に見えてくる。