2025年は詩人、長田弘さんの没後10年にあたります。みすず書房から出ているハードカバーの詩集とエッセイは、いまもたくさんの方に読まれています。本棚に差しておいて、時々開いて読み返したくなる、静かで明晰なことばのアルバムをご紹介します。
1. 長田弘『一日の終わりの詩集』
(2000年刊)
「人生ということばが、切実なことばとして感受されるようになって思い知ったことは、瞬間でもない、永劫でもない、過去でもない、一日がひとの人生をきざむもっとも大切な時の単位だ、ということだった。」(あとがき)
長田弘が、はじめて、凛としていさぎよく、自らの〈人生の秋〉を詩った「私」詩篇。
2. 長田弘『人はかつて樹だった』
(2006年刊)
「大切なことだけが
書かれている詩集です。」
(帯文より)
「自由とは、どこかへ立ち去ることではない。
考えぶかくここに生きることが、自由だ。」
(「空と土のあいだで」)
21篇を収める。私たちをとりかこむ自然や世界を歌っていてみごとな作品。
3. 長田弘『世界はうつくしいと』
(2009年刊)
「あざやかな毎日こそ、わたしたちの価値だ。
うつくしいものをうつくしいと言おう。」
(「世界はうつくしいと」)
人生の午後はゆっくりと風景や時間に向きあうことがたいせつ。大人の読者に支えられ、毎年版を重ねる、寛ぎのときのための詩集。
4. 長田弘『詩の樹の下で』
(2011年刊)
洞のある木、山路の木、寂寞の木、秘密の木、手紙の木、虹の木…。
(それぞれの詩のタイトルより)
樹や林、森や山のかさなる風景に囲まれて育った、著者の幼少期の記憶をモチーフにした詩集。
2011年、震災の年に刊行された39篇からなるFUKUSHIMA REQUIEM。
5. 『長田弘全詩集』
(2015年刊)
最初の詩集から50年、18冊の詩集、471篇の詩を収める唯一の完成版。著者が亡くなる5日前の4月に刊行された。
6. 長田弘 『最後の詩集』
(2015年刊)
「思うに、歳をとるにつれ
人に必要となるものはふたつ、歩くこと、そして詩だ。」
(「詩って何だと思う?」)
青い空のようにあくまで明るく、なおかつ深い、75年をまるで一日のように生きた詩人が残してくれた、本の贈り物。
連作小文「日々を楽しむ」を大橋歩のイラストとともに併せ収める。
新緑の季節に逝った詩人が贈るラストアルバム。
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(お知らせ)長田弘さんの郷里、福島の県立図書館では、現在「長田弘の“本と言葉”展~長田弘没後10年~」が開かれています(2025年7月2日まで)。
くわしくは同館のウェブサイトをご覧ください。
リンクはこちら
https://www.library.fcs.ed.jp/index.php?key=jo3yvsr4n-2311#_2311