2025年6月に書評掲載された本をご紹介します。
カール・L・ハート『薬物戦争の終焉――自律した大人のための薬物論』
片山宗紀 訳、松本俊彦 監修 2025年5月刊
「薬物戦争」の名のもとに行われる社会的弱者への人種差別や人権侵害は、もう終わりにしよう。ヘロインユーザーの神経科学者が、違法薬物をめぐる神話を解体する。
- 日本経済新聞 2025年6月14日 評者・村上靖彦さん(大阪大学教授) 「厳罰化が人種差別の『手段』に」
- 毎日新聞 2025年6月28日 評者・斎藤環さん(精神科医) 「厳罰主義が招く負の連鎖 正しい情報は」
ダニエル・ヴァルデンストロム『資産格差の経済史――持ち家と年金が平等を生んだ』
立木勝 訳 2025年5月刊
ピケティのナラティブを超えて。「富の平等化の主たる触媒は戦争による破壊でも累進課税制度でもない…」鍵は「持ち家」と「年金」にあった。最新の歴史的データをもとに、平等化への道筋を示す実証研究。
- 日本経済新聞 2025年6月21日 「『脱ピケティ』新たな格差論」
上野千鶴子『アンチ・アンチエイジングの思想――ボーヴォワール『老い』を読む』
2025年4月刊
私たちはなぜ老いを恐れるのだろう。ボーヴォワール『老い』を読み、老い衰え自立を失った人が生きる社会を構想する。
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週刊文春 2025年 6月5日号 評者・酒井順子さん 「私の読書日記 国語、老い方、親との別れ」
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共同通信配信(沖縄タイムス、山陰中央新報ほか) 評者・荻野美穂さん(歴史学者) 「老後 いかに受け入れるか」
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東京新聞・中日新聞 2025年6月21日 評者・武田砂鉄さん(ライター) 「依存的な存在として生ききる」
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婦人公論 2025年7月号 評者・中江有里さん(女優・作家) 「弱いままで、尊厳をもって生きるために」
ベンジャミン・H・ヤンデル『ヒルベルトの23問題に挑んだ数学者たち』
細川尋史訳 2025年4月刊
20世紀の激動の中で「ヒルベルトの問題」に挑んだ俊秀たちの学問的足跡をたどる。巻末にヒルベルトの講演論文「数学の問題」の全訳を付録。アメリカ数学協会オイラー図書賞受賞作。
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週刊読書人 2025年6月27日号 評者・三浦伸夫さん(神戸大学名誉教授・数学史) 「未来の数学者を育てるべき書物 数学的問題に加え、数学者の人物像も多角的に描出」
四方田犬彦『アジア映画とは何か』
2025年4月刊
アジア映画の過剰なまでの混沌と豊饒に魅惑され、その世界に踏み入ることで理解を試みてきた著者の、60年に及ぶ身体的思考の集成。巻末に石坂健治氏との対談を収録。
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図書新聞 2025年7月5日号(3694号) 評者・小野沢稔彦さん(映画プロデューサー) 「アジア映画は「日本人」を検証する――日本の民衆が忘失してしまった〈反抗〉の力をアジア映画に見る」
松下安武『並行宇宙は実在するか』
野村泰紀監修 2025年4月刊
「この夜空のずっと先はどうなっているのだろう」という素朴な問いから、「マルチバース」と呼ばれる宇宙像に到達するまで。宇宙論の基本から最先端の理論までの過程を、豊富な図版とともに網羅的に解説する。
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天文ガイド 2025年7月号 評者・塚田健さん(平塚市博物館)
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家電批評 2025年7月号 評者・冬木糸一さん 「SFで読みとく未来のトリセツ」第45回「宇宙は複数ある!宇宙論とエンタメの最前線」
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日経サイエンス 2025年8月号 評者・森山和道さん 「森山和道の読書日記」
『グレン・グールド著作集』
ティム・ペイジ 編、宮澤淳一 訳 2025年4月刊
独創的ピアニストが遺した言葉を「音楽」「パフォーマンス」「メディア」などに集大成。未来に読み継がれる35年ぶり新訳決定版。
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読売新聞 2025年6月15日 「記者が選ぶ」
ラース・チットカ『ハチは心をもっている――1匹が秘める驚異の知性、そして意識』
今西康子 訳 2025年2月刊
高速の思考。数を数え、道具を使い、他の個体から問題解決法を盗みさえする! ハナバチ認知研究の権威である著者が、1匹の内にある驚くべき精神生活を実験で説き明かす驚異の昆虫研究。掲載図版はフルカラー。
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読売新聞 2025年6月8日 評者・ドミニク・チェンさん(情報学研究者・早稲田大教授) 「個として生きる愛おしさ」
『ハチは心をもっている』詳細はこちら
【試し読み】「はじめに」[抄]
松本莞『父、松本竣介』
2025年1月刊
「そして松本竣介は宝石のようだった。」――奈良美智(本書帯文より)
36歳で没した夭折の画家・松本竣介の生涯と、戦後日本の美術界での受容の歴史を、作品を守りつづけた竣介の次男・莞が丹念に辿った決定版評伝。
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東京新聞 2025年6月8日 著書インタビュー「昭和初期から戦後活躍 早世の洋画家、松本竣介の生き様 次男・莞さんが逸話まとめ出版」
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美術手帳 2025年7月号 評者・中島水緒さん(美術批評) 「家庭から見た戦時の画家の姿」
松隈洋『未完の建築――前川國男論・戦後編』
2024年12月刊
国立国会図書館、東京文化会館はじめ数々の建築の設計を手がけ、「人間にとって建築とは何か」を問い続けた前川國男。前川自身のことばや関係者の発言、当時の資料を駆使して、その人と作品と時代を鮮やかに描く。
- 住宅建築 2025年6月号 評者・林大地さん(京都大学博士課程) 「伝統と近代、その接続」
近藤滋『エッシャー完全解読――なぜ不可能が可能に見えるのか』
2024年12月刊
100点を超える図版で、《物見の塔》《滝》などだまし絵5作の制作過程を分解する。エッシャーが制作中に何に悩み、何を大切にしていたかにまで踏み込んでいく。謎解きの楽しさに満ちた1冊。
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クロワッサン 2025年6月25日号 評者・瀧井朝世さん 「文字から栄養」
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ドクターズマガジン 2025年7月号 評者・仲野徹さん 「押し売り書店 仲野堂」
ヤン=ヴェルナー・ミュラー『恐怖と自由――ジュディス・シュクラーのリベラリズム論と21世紀の民主制』
古川高子 訳 2024年11月刊
リベラリズムは時代遅れなのか。ポピュリズムや民主主義の著作で知られる政治学者が、J・シュクラーの議論を指針に、リベラル思想のアップデートを試みる。巻末にシュクラーの論文「恐怖のリベラリズム」全文併録。
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週刊 金融財政事情 2025年6月10日号 評者・河野龍太郎さん(BNPパリバ証券 チーフエコノミスト)
『恐怖と自由』の詳細はこちら
【新刊紹介】快調に車を運転していたリベラルがピンチに陥る。向こうから逆走車がどんどんやってくるのだ――?