みすず書房

話題の本

チェスをめぐる3作

2023年5月10日

チェスこそが本物。チェスはスポーツ、芸術、哲学が一つになったもの――
奥深いチェスの世界にまつわる本をご紹介。

ツヴァイク『チェスの話』

チェス小説の古典中の古典(若島正・評)。「チェスの話」は、作家シュテファン・ツヴァイクが1941年、亡命の途上で書いた最後の小説です。
ナチスの圧制下でホテルに軟禁されたオーストリアの名士を主人公に、一冊のチェスの本をめぐって展開する陰影に満ちた傑作。
この世界的ベストセラーが映画されました。『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』(フィリップ・シュテルツェル監督、2021年、ドイツ、112分)2023年夏より日本全国順次ロードショー。

F・ウェイツキン『ボビー・フィッシャーを探して』

チェスの神童ジョッシュとその父親(著者)が、伝説的棋士ボビー・フィッシャーへの憧憬を胸に歩んだ、全米ジュニア・チャンピオンへの道のりを描くノンフィクション。
チェスに魅入られた人々の興奮と葛藤を、このうえなく切実なタッチで写し取った珠玉作。
映画化もされています。『ボビー・フィッシャーを探して』(スティーヴン・ザイリアン監督、1993年、アメリカ、110分)。

J・ウェイツキン『習得への情熱―チェスから武術へ―』

かつてチェスの神童と呼ばれ、長じて卓越した武術家となった著者ジョッシュ・ウェイツキンが、トップクラスの競技者になるためのart of learning(習得の技法)を語る。
「気がついた。僕は太極拳やチェスに長けているわけではないのだ──僕が得意なのは学ぶこと、そう、習得の技法なのだということを。この本は、僕の方法論の物語だ」
優れた競技者になるための内的技法は、競技の種類によらず、驚くほど共通していると著者は言う。学びへの開かれたアプローチ、学ぶ喜びについての衒いのない、ひたむきな語り。