親になろうとするとき、親になりたいと願うとき、まずは自分たちで妊娠・出産しようとする。それが思っていたよりも難しいとわかったときに、高度に発達した医療技術の選択に直面する。
選択の結果、それまでに想像していた「親子」とは少し違う選択――精子提供や卵子提供による妊娠――をするかもしれない。
親になるのを望み、さらに子どもが健康に生まれてくるのを願うときに、出生前検査という選択肢を提示されることがある。もしも、胎児に病気あるいは障碍があると指摘され、それが治療できないと言われたらどうするのか。検査を受けることも、受けないことも、検査の結果を受けて、出産しようとすることも、妊娠を中断しようとすることも、親になろうとしている人たちの選択だとされる。
いまや選択肢は国境を越えて示される。その一方で国によっては法律で認められていないもの、倫理的問題があるとされるものも選択肢に含まれる。「子どもが欲しいだけなのに」「親になりたいだけなのに」、法律や倫理によって選択したい技術が規制されることに疑問をもつ人もいるだろう。技術が際限なく進展することに疑問をもつ人もいるだろう。
本書では、生殖技術を使って「親になる」とはどんな経験なのか、それを、インタビューやアンケート、フィールドワークを通して、描いた。技術を選択する立場にある人たち、選択を避けた人たち、選択できないにもかかわらず当事者になった人たち、いろいろな人の経験と気持ちをできるだけ丁寧に記述し、それをめぐる法律や倫理、政治や経済、そして医療について考察した。本書がいろいろな立場から生殖技術と親になることをめぐって考える際の資料になればうれしい。
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