青山直篤「解説」全文(PDF、960KB)
ライオネル・ゲルバー賞受賞作
「『貿易戦争とは、階級闘争である』。そんな題名の新著で注目される米国の経済学者がいま、中国にいる。米国と中国などとの間で続く貿易摩擦の根底には、各国の内部で広がる経済格差がある、という主張だ。どういうことか」(朝日新聞、2020年9月18日付)。この出だしではじまるインタビュー記事を目にしたのは、ちょうど本書の企画も通り、翻訳権が取れてまもなくのこと。本書『貿易戦争は階級闘争である』(原題はTrade Wars Are Class Wars)の共著者で、北京大学ビジネススクールの教授を務めるマイケル・ペティス氏が、このインタビューのなかで、国際的な輸出競争が賃金の引き下げ圧力として働き、米中をはじめ各国の労働者に不利に働くメカニズムを端的に解説してみせていました。
この本のユニークな論旨に注目している日本のジャーナリストがいることを心強く感じ、ペティス氏にインタビューして記事を執筆した同紙アメリカ総局の青山直篤記者に、本書の巻末解説をお願いしました。解説では、ペティス氏との対話はもとより、これまでに青山記者がインタビューしてきたローレンス・サマーズ元米財務長官や、ロバート・ライトハイザー元米通商代表らとのやり取りも踏まえた独自の視角を加え、本書を読み解く際のよき補助線となってくれます。
奇しくも、英語版の原書はすぐれた外交関連書に贈られる「ライオネル・ゲルバー賞」(2021年)を4月に受賞し、ふたたび話題を呼んでいます。バイデン政権の対中政策が次第に明らかになり、ますます今後が気にかかる米中貿易戦争の行方を見定めるためにも、ホットな注目を浴びる本書をぜひお読みください。なお、青山記者による巻末解説(「貿易戦争」の核心)はこちら(PDF、960KB)からもご覧になれます。